二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.65 )
日時: 2011/02/02 17:53
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: PdKBVByY)

 夜・・・闇に包まれ、月明かりはあたりを照らす。

「・・・野宿決定だな」

 リーシアは、そこらの岩に腰を下ろすと、簡素な水筒を懐のポーチから出した。
中身を自分の周りに円になるようにぶちまけ、ふたをする。聖水だった。
これで、ここらの弱い魔物は一歩たりとも近づけないだろう。
 [この辺りの村]は明るいのだろう、と考える。でなければ、村の娘(マイレナのことを思い浮かべた)が一人で
容易に出歩けるはずがない。
マレイヴァは絶望に埋め尽くされた。あの襲撃のせいで。
被害を受けた人々、戻らない命、屈辱、哀切・・・人々の絶望を、魔物は喰らった。魔物は次々と進化し、
マレイヴァ周辺の魔物たちは異常なほどの大きな力を身に着けた。
(・・・そこを、十二歳から歩いてきたわたしを舐めないことだ)
 マレイヴァ襲撃から、二年。当時、十二歳。
 マレイヴァ姫君は、その日のうちに、一人の孤独な旅人と化した。
 復讐だけを胸に誓う、若き旅人に。
(あの男・・・間違いない。わたしの正体を、知っていた)
 今日戦った者だ。魔族の一人。人間のなりそこないのような風体だった。
十四歳の娘、しかも小柄で秀麗な顔立ちの少女を殺めることなど、大したことではないとでも思っていたのだろう。
それが命取りだ。“姫騎士”の称号は伊達ではない。マレイヴァ崩壊に関わっていた者に、一人目、復讐を遂げた。
(・・・いろいろ聞きだすつもりでいたのに・・・邪魔されたな、あの娘に)
 マイレナだった。名前は忘れている。人のことに、興味は持てなかった。


 リーシアはおろした長い髪をうっとうしそうに払い、ふっと空を見た。星が瞬き、自分こそがと輝きあう。
月は平然と同じ光を出し続けたままだというのに——

 私は月だ、とリーシアは思った。自分が輝こうなどと、一度も思ったことがない。新しいことを求めない。
何かに尽くそうとも思わない。ただ毎日同じことを続けるだけ、同じ光を出すだけの、それ以上を求めない冷めた月。
 ならば、星は? 星は、この世の欲深い人間たちだ。己の欲望を満たすために美しく見せ、せめぎ合う醜いもの。
くだらない、とリーシアは肩をすくめた。

 ・・・太陽は。

 ふっと、そんなことを思った。
月と同じ、毎日同じだけの輝きを放つもの。だが、決して消えはしない——存在さえしていれば、
全てが明るく照らされる・・・暖かい太陽は。

———祈り。生きているときが善であれ悪であれ、死んでしまった人はどちらでもないでしょ

 ・・・あの少女だろう。あの少女こそが、太陽だ。すべてを明るく照らす、邪に屈することなき正義の魂。
・・・リーシアには、到底考えられなかった。リーシアに、太陽はなかった・・・
(月と、星と・・・太陽、か)
 リーシアはふっと思い、そして——眠った。











      Chess)ちょっぴりシリアスな内容。我ながらよくこんなどギツイ話考えたなと(苦笑
            レイサ: いやそこ笑うとこじゃないでしょ作者。