二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.72 )
日時: 2011/02/25 17:53
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: PdKBVByY)

     【 Ⅲ 】

「リーシア。リーシアさぁん」
 目覚めの腹筋をしていたリーシアは、背中を床につけたまま自分を呼ぶ声に反応する。
見上げると、相当の疲労と困惑に顔をゆがめた逆さまのレイサがどアップでうつっていた。
「近ッ」
「あ、ゴメン」
 レイサは顔をあげる。
「・・・と。おはよう。何?」
「あ、おはよ・・・うん。困った。ほんとー×3くらい困った」
「何が? ・・・まさかグラデンヘルゼに行けなくなった?」
「違うよ」
 ほっ、としてリーシアは身体を起こし、腹筋再開。
「じゃ何?」
「助けて。マイレナが起きん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 リーシアは立ち上がり、フライパンを探したが、当然個室にあるはずがない。
「仕方ない」
 ということで、リーシアは遠慮容赦なくマイレナの個室にずかずか入ると、
この上ないほど幸せそうな顔をしてヨダレを垂らすマイレナの顔を睨みつけ、
これまた容赦なくマイレナのシーツを一気に引っ剥がした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・っでぇえっ!!」
 瞬間マイ起こし炸裂。
「づぅででっ・・・ちょっとリーシャ? 何やった? ・・・まさか、私の起こし方知った・・・?」
 マイレナは頭をふらつかせながら、リーシアの手の(ヨダレのついた)シーツを見て言う。
「とっくに」
「・・・・・・・・・・・・・・・。あそ」
 不機嫌な顔でマイレナはむっくり立ち上がる。熊か。
「うわ・・・」
 そして鏡を見て、自分の寝ぐせを確認して溜め息をついた。



 太陽が南中する頃、一行はポスタミアの定期船を待っていた。
リーシアが船乗りに話を聞きに行っている間、残された二人は、潮風にあたりつつのんびりしていた。
「快晴だねぇ。気持ちいいや」
 マイレナが呟く。うとうとと頭が舟をこぎ始めていた。
「・・・・・・・え、ちょ、マイレナ? まっまさか寝るつもり!? 
まずい、また起きなくなる・・・こらマイレナっ、起きんかい、ヒャド」
 眠る直前のマイレナに、レイサが 氷固呪文_ヒャド_ を唱えた。
もちろん手加減したので傷は負っていないはずだが、いきなり首筋にはしった冷気と投げ込まれた氷に、マイレナは
「っっぎゃぁぁああぁぁっ!?」
 ・・・・・・・・・・大いに叫ぶ。
「声デカすぎっ」
 レイサが慌てるが、時既に遅し、
「どうしたんだッ!?」
 ・・・リーシアが登場した。「魔物か・・・な、わけないか」
「違う。うん。魔物っつうか悪魔」
「は?」
「マイレナ・・・もう一回喰らおっか」
 いいえスミマセンもう言いませんと、マイレナは必死で頭を下げた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・? ああ、ところで、船だけど」
「うん」
「・・・“ダーマ神殿で定期券を購入しろ”・・・だってさ、ティルス」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・へっ?」
 いきなり出てきた名前に、マイレナとレイサ、素っ頓狂な声を出す。
リーシアの視線の先に、・・・ティルスがいた。
「・・・参ったな。何で分かった?」
「勘はいい方なんだ」リーシアは言う。「顔までは見えなかったんだけど、わたしだけならともかく、
この二人にまで隠れる必要があるのはあんたくらいしかいないからね」
 ティルスが口笛を鳴らす。「さすが」
「何か盗もうとでも思ってたんじゃないのか?」
「まぁ・・・な。定期券でも持っていたなら、それをな。だが、あんたらも持っていないとなると・・・無理か」
「残念ながら」
「ここの住民も、誰も持っていない」ティルスは続ける。「となると、ダーマ神殿へ行くしかないか・・・面倒くせぇ」
「たしかに・・・ねぇリーシア、行く? 行くの、やめる?」
「行く」リーシアはきっぱりと言った。
「やっぱそーなるのね・・・」レイサは苦笑した。
 マイレナはリーシアとティルスとレイサを順に見て、言う。
「どうせだし、ティルス、あんたもどお?」
「俺?」
 ティルスは目をしばたたかせる。しばらく考え、そして、にやりと笑った。
「・・・・・・・・・・・・・・そうだな。たまには盗まず物を手に入れてみるか」
「あんたどんだけ物盗んでるわけ?」レイサは、次は笑った。