二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.80 )
日時: 2011/03/19 21:16
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

 壁は雪原の白。窓は光煌めくステンドガラス。周りの木々から木漏れ日が差し掛かり、きらきらと輝いた神殿。
レイサに言わせると、目の前のダーマ神殿はそういう表現をするのが適切らしい。
「綺麗ねぇ、いつ来ても」レイサがうっとり呟き、
「はいはい、詩人のレイサさん、行きますよ」マイレナは呆れ半分に言う。
「てかレイサって、『職』なんだっけ?」
「言わなかったっけ。踊り子だけど」
「・・・・・」マイレナが数秒停止し、一言「頭痛くなってきた」。
「ま、つまり、『職』としての踊り子を利用して、自分の生活? の仕事・・・『職』にした、ってことだろ?」
 ティルスの助け舟。いい教師になれるわアンタ、とマイレナが言って、
レイサがさっきのお返しにマイレナの頭をはたく。
「ま、そーいうこと。それに、旅芸人と吟遊詩人極めれば、スーパースターにもなれるしね」
「すーぱーすたー・・・」
 マイレナがやはり混乱しながら、ダーマ神殿の扉を開けた。


 中はまさに神聖の地だった。観葉植物らしきものが並んでいたのは気にしないとして、窓から差し込む光が、
ガラスの色に応じて様々な色を煌めかせていた。

 が。

 足を踏み入れた瞬間、ざわり、と何とも嫌な予感を、四人ともが感じた。
神聖なる場所に、垣間見える邪悪が、四人を監視している——。

「ようこそダーマ神殿へ」

 思わず足を止めた四人のもとへ、白いひげを生やした高齢の男が歩み寄ってくる。
白髪の長めの髪、白い髭、妙な色を成したローブをダボつかせて身にまとっている。
大神官か、とティルスとレイサは思った、が、違和感を拭いきれない。なんか違う、と、ほとんど同時に思った。
 マイレナとリーシアにしてみれば、一見気さくな老人である。だが、笑って細くなった眸は、針のように鋭い。
 嫌な、感じに。
「転職をお望みか? ・・・どなたが望むのじゃ」
 老人は品定めするように四人を見まわし、視点をリーシアに合わせる。
 リーシアの脳裏に、フェイクスの言葉がふっと蘇った。

“魔族には、すでに貴女が生き永らえていることは知られている”

「貴様、何者だ! 姿を現せ!」
 リーシアは警戒し、叫んだ。常にない叫び声にマイレナは驚き、老人がにやりと笑う。
その時、四人の後ろに、何かの並ぶような音がした。・・・魔物の、大群であった。
「・・・囲まれたー」
 レイサ一言。緊張感がまるでない。
「そーだねぇー・・・」
 マイレナも同じだ。ちゃっかりあくびまでしている。寝るなよ、とレイサ。
「偽神官さんよ、転職するにはこいつらと戦えばいいのか?」
 ティルスが明らかにバカにしたような口調で言い、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 リーシアはあくまで無言で老人を睨み続ける。
 そして老人は、その生意気な旅人の様子に顔を赤くし、部下たちであろう魔物に命令する。「殺せ」
 魔物の群れがわっと集まってくる。
「人間の言葉が分かんのかよ!」
 ティルスは真空波を唱える。
「何も出来なかったさっきにたまったストレス、一気に暴走させるよぉ!」レイサが叫んで、手当たり次第に
火炎呪文_メラミ_ をぶち込む。リーシアはそれに類し 空爆呪文_イオ_ を唱えた。おかげでマイレナが
魔物に攻撃しようとしても、一緒に被害を受けてしまいそうでなかなか行けない。
「・・・なんか」
 空爆が、火炎が、真空波が、そろってごうごうごうごう鳴っている横で、マイレナが呟く。
「レイサ、アンタの辛さがわかるのは、私しかいない。うん」
 一番近くにいたリーシアがその声を聞き取り、首をかしげる。
 結局マイレナの暴れる暇なく、魔物たちは一匹残らず消滅した。
「さて、偽神官さま? ご本人に、会わせてもらえますこと?」
 レイサが気取って言う。が、老人は、またしてもにやりと笑った。
両の手のひらを挙げ、降参したしぐさを見せながら・・・ゆっくりと、後ずさる。
「逃げるのか」
 ティルスだ。盗賊であるからか、それが分かった。ティルスが老人の足元を狙い、駆け出す。
手にはシーブスナイフがあった。足さえ負傷させれば、行動はとりにくくなる。
が、一瞬届かなかった。老人はくるりと身をひねって、奥へかける。ありえないスピードだった。
リーシアが追い、ティルスは床に手をつき前転して、倒れるのを防いだ。
 老人は、杖を手にする。勝ち誇ったような笑みが、憎たらしい。
リーシアも、間に合わなかった。老人は、杖を掲げると——言い放った。









「喰らうが良い。———バシルーラ」









「っ!?」
 ばんっ! 大きな音がして、目の前に衝撃が走る。



 だがその刹那、マイレナと、リーシアの身体が、眩い光を放った。




 そして、四人は、ダーマ神殿から、消えた。