二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.93 )
日時: 2011/03/23 21:38
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

「世界樹人の継承者」
 セルハは、レイサの独り言をまたも無視するように、続けた。
「その証である、世界樹の首飾り・・・それには、この世界と、闇と、間を結ぶ役目を果たす能力が秘められる・・・
その力が発揮され、あなたたちは、この世界へ飛ばされた」
「・・・でも、待ってよ」レイサは言う。
「・・・これ、偽物よ? いつ盗られるか、分かったものじゃなかったし・・・」
「あなたのではありません」セルハは答える。
「邪より崩壊せしマレイヴァの、生き残りである気高き血筋の娘、ヴェルシーナ・・・彼女の右の皮手袋。
首飾りの成り代わりが、それを成しとげた」
(首飾りの成り代わり・・・?)
 何かホント、わけわかんない話をする人だなぁ、とレイサは思った。
「・・・で? いきなり、ヴェルシーナ姫って・・・ちょっと待って。生きてんの? つか、一体どこにいんのよ?」
 レイサの問いに、あっさりとした答えが返ってくる。
「・・・あなたの、すぐ近くに。右手に火傷を負い、幼少の記憶がなく、
また自らが闇と光の継承者であることをいまだ信じ切れていない様子の娘が・・・近くに、居るのではないですか?」
 右手に火傷?
 記憶喪失?





 リーシア




「・・・・・・・・・・・・・・・——————っ!!」
 頭にふっと浮かんだ、強く聡明な、仲間の娘の顔。
(う、う、うそぉっ、あたしの冗談が・・・ま、マジで、ガチだったわけっ!?)
「彼女こそ、古の世界樹の子を束ねし闇と光の使者の子孫。そう・・・闇と光の継承者と呼ばれるのは、その為」
「・・・・・・・・・・・・」
 混乱してきた、とレイサは思った。
「あの首飾り・・・[本物]を、彼女たちに託すのです」
 セルハが滑らかに、指と指を絡める。
「 首飾り_あれ_ を、魔物の手に渡されてはなりません・・・アインテルスのエージェのように、
魔物は、首飾りを狙っています。世界に存在する子孫たちから、それらを集めることが、聖の子マイレナの使命・・・」
 あの、あたし、レイサなんですけど、と思ったが、さすがに口にしようとは思わない。
(・・・ちょ、待てよ? 確か、ここに来た原因に、マイレナも入ってたような・・・?)
 ちょっと肝心なところもうちょっと説明しなさいよ、と、今度こそ声に出して言おうとした時、
またもや声が出なくなっている。
 ちょ、ちょっと、勝手に人から声奪ってんじゃないわよっ!! ・・・という無言の叫びも声に出ない。
もしレイサがこれは物語だ、と理解していたら、
セルハあんたもうちょっと読者にやさしくなりなさいよ、と言っていたことだろう。



 ・・・と、不意に、ぱりん、とガラスの割れたような音がした。レイサははっとする。
意識が薄れていく。ちょ、話、まだ終わって——声の出ない唇の息遣いを聞きながら、
光の向こうに見えた三人の人影を視界に入れつつ、——レイサの意識は、そこで途切れた。