二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.97 )
- 日時: 2011/03/27 14:13
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
「・・・運休?」
マイレナはオウム返しで問う。
「あぁ。今やグラデンヘルゼ国に圧制されてるからな。いや、圧政、か? ・・・ま、とにかく、
自由に船を動かせんのよ。アインテルスからも、あんま客は来なくなっちまったしな」
アインテルス・・・マイレナは思った。どういうことだろう。この世界と、本来の世界、地形が同じだ。
いや、第一この世界は、一体何なのだろう・・・地獄、って。
マイレナもマイレナで、レイサと同じようにガイコツごろごろマグマぐつぐつを想像していたので、拍子抜けている。
「・・・そういえばさぁ。近くの、ダーマ神殿ってトコ、知ってる?」
マイレナが尋ねると、船乗りのおじさんはきょとん、とする。
「・・・何だ、嬢ちゃん、 宝探し_トレジャー_ しに来たのか?」
「は? いやいや、ダーマ神殿知ってる? って聞いたんだけど」
「知らんのか? あそこには、静寂の玉ってぇお宝が眠ってるんだ。そいつを使いやぁ、
そこらの炎だの氷だのマホウってのを使うやつのそれを封じ込めちまうのさ」
「・・・魔法を封じ込める・・・?」
「おうよ。んだが、命惜しきゃ行かねぇこったな。あそこぁ魔物がウジャついてっから」
「そーなんだ」マイレナはやはり緊張感なく答えて、じゃっ、と船乗りに声をかけて立ち去る。
遠くでリーシアとティルスが話しているのが見える。仲いいよなぁ、などと見当違いなことを思うマイレナ。
(ひとまず、もーちょい情報収集だなぁ・・・)
マイレナはぐいっと背伸びすると、すたすた歩き、そして。
(・・・どこ行こう)
結局止まった。完璧なネタ切れである。
「・・・・・・・・・・・・」
マイレナはしばらく考え込み、そして、
「よし。買い物しよう」
なぜか方針を口に出して、武器屋へ直行する。
「・・・あれっレイサ?」
そして、武器屋の前に立つレイサを見つけた。
「ん? あ、マイレナも情報収集?」
「え、あ、うん、まぁ、ね」
ネタ切れしたとはいえず、適当に答えたマイレナは、レイサの隣に並んだ。
「そっちは、情報、集まった?」
「うん、そこそこね。——あ、おじさん、コレ頂戴」
レイサが武器・・・短剣の一つを指す。
「バタフライダガーだな。ほいよ」
「ありがと」
マイレナはそのやり取りを見て、目をしばたたかせる。
「バターフライ?」
「揚げるな!! バタフライ!! バタフライダガー。この切っ先に毒が仕込まれてて、
かすったら、しばらくすりゃ相手はマヒするって感じの武器よ」
「お見事!」店員、賞賛。「いっそのこと、ここで武器解説者やってみるかい?」
「あはは、冗談上手いねぇ」
そんな調子のレイサを見て、こいつ本当は何の情報も集まってないんじゃぁ・・・と、マイレナは思う。
「蒼いお嬢さんも、何かどうだい?」
「・・・・・・・・・・え、私?」
誰が蒼い嬢さんだ! と言おうとしたが、よく考えれば、髪も眸も、服まで蒼いんだった、と気づき、
仕方ないかと考え直す。
「いや、いいよ。金欠なんだ」
じゃあ何で来たんだ、と言われそうな言葉である。
「それは残念——って、まぁ、仕方ないか。今の世態じゃあな」
「・・・やっぱ苦しいの?」
「あぁ。税金は上がって旅人率は減って・・・俺たちゃ商人は、破滅状態さ」
「・・・そう、なんだ。やっぱ、自分たちのために税金を・・・?」
「いや、違う」
あっさり言われ、「は?」と問い返す二人。
「兵士を集めるんだ。ダーマ神殿の魔物退治、ってな。だが、違う。本来は、きっと、宝を狙っているんだ」
「宝?」
「静寂の玉のこと?」
レイサが問い返し、マイレナは答える。
「正解だ。これくらいの大きさでな」両手の人差し指と親指で輪を作る。
「青と緑の混ざったような色をしている。観賞用としても申し分ない」
「・・・詳しいね」
「アレはもともと、ここの財産だったのさ。歴史書に残ってる。
だが・・・あの国があれを求めるのは、別の意味があるように思えるんだ」
「別の?」
「もしかして、魔法を封じるから?」
再び、レイサが問い返し、マイレナが答える。
「正解だ。って、さっきもこの言葉言ったっけ」
「パターンも一緒」
「悪かったわね何も知らなくて」
「何故そうなる!?」
マイレナがそう言ったところで、ぽつり、と何かが鼻に落ちる。
「ん・・・雨だ」
「え? わわ、しまわなきゃ」
商人があわてて武器を片付ける横で、レイサは目を細めた。
「不吉ね」呟く。「何か悪いこと、起きなきゃいいけど」
「大丈夫だよ」マイレナが返す。「悪いことが起きたら、解決して見せるだけだ」
二人は宿に戻った。
雨は次第に、地面に強く打ち始めてゆく。
——【 Ⅲ 】完結。