二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.98 )
日時: 2011/03/27 14:02
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

       “ それでも人は
               分かりもしない明日を求める—— ”


    【 Ⅳ 】

 闇の霧は相変わらずもうもうと立ち込め、肌にまとわりついてくる。
ダーマの神殿を原点に、霧は円を描くように渦巻く。
神殿に近付くにつれ、足元が怪しくなってきた。ねちょり、と言う音がする。
「タールだ」ティルスが言う。「へばりつくと、鈍重・悪寒・寒気のオンパレードになるから気をつけな」
「・・・ゴメン悪寒と寒気ってほとんど同じに聞こえるんだけど」
 マイレナが突っ込む。ティルスが目をしばたたかせ、やがてあさっての方向を見る。心当たりがあったらしい。
「・・・ま、そういうことなら、私にお任——レイサそこっ!」
「ひっ!?」
 レイサ一時停止。
「し、し、心臓に悪いマイレナ」
「いやゴメン。でも、もうちょい左に・・・もう少し・・・いいよ」
「う、どーも。さすがねぇ・・・目のいい人ってうらやましい」
「なってください。いちいち指示することになると面どレイサストップ!!」
 きゃーきゃーきゃーと叫ぶ二人(主にレイサ)をよそに、リーシアは溜め息。
「・・・ひとまず、静寂の玉って奴さえあれば、あいつの・・・ダーマ神殿の偽神官の
強制移動呪文_バシルーラ_ を止められるけれど」
 昨日泊まった宿で、マイレナとレイサの報告はすでに聞いていた。ティルスは盗賊だけあって静寂の玉のことは
知っていたが、リーシアは知らない。武器商人の言っていた歴史書に目を通して、大体の形を想像したらしい。
「・・・でも、どうやって現世に戻るんだろう」
「俺のカンはさ」ティルス。「静寂の玉さえ手に入れりゃさ、戻れるんじゃないか?
どーせココはまやかし・・・地獄ったって、幻想みたいなもんだろ?」
「・・・そう上手くいくか?」
「可能性は信じてみるもんだぜ」
 どういう可能性だ、とリーシア。と、そこに、すかさずマイレナの荒声。

「リーシャ足元っ!」
「え? ——っ!」

 リーシアは、踏み出しかけた足を上げ、踏みしめるはずだったタールを避けるようにクルリと身をひねる。
が、さしものリーシアもバランスがついてゆけず、横に倒れこんだ。
「——ってぇ・・・」
「大丈夫? 珍しい」
「余計だ。・・・怪我しない転び方でも覚えるか・・・」
 怪我の具合を見てリーシアは呪文で治療するかどうか考えたが、大した怪我でもないと思い、サッサと立ち上がる。
「・・・もし、静寂の玉を使ったら・・・使われたら、回復呪文も使えないんだろうな」
「だね。あたしの呪文も使えないや」
「そうなったとき、あんたは何をするつもりなんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・今はいいのよ今は・・・・」
 ティルスのからかいモドキにレイサが若干怒りマークを付けた状態で答え、その後マイレナが言う。
「見えたダーマ神殿」
「ん。——行くか」
 四人は歩くスピードを速めた。しかし、

「レイサっそこ!!」
「きゅわわぁぁぁぁっっ!?」

 ・・・やはりこの二人はうるさかったのだが。