二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナイレ 【薔薇の倉庫】 ( No.768 )
日時: 2011/07/13 20:26
名前: 薔薇結晶 (ID: ObYAgmLo)
参照: http://bluerosebreak.blog.fc2.com/

『眼〜eyes〜』

——魔力無き“発言者”(1)——







[≪王牙(オーガ)≫Aチーム、状況を報告せよ]

と、低い声が聞こえる。
すると、銀髪の少年は小声でこう答えた。

「3層目、ダンジョン≪吸血鬼の巣(ヴァンパイア・ハウス)≫の最深部に到着。目標の館を確認」
[よし。≪王牙≫Aチーム、潜入を開始せよ]
「了解」

「潜入だ。ミストレ、エスカバ」
「早速か。…魔力足りるといいな」

綺麗な顔立ちの少年と、黒いフェイスペイントの少年。
ご存じのとおり、ミストレーネ・カルスとエスカ・バメルだ。
そして銀髪の少年はバダップ・スリード。

≪王牙≫とは、≪ヴィレネイズ≫の警察的団体である。
悪人を捕まえるのはもちろん、パトロールに近い偵察もする。
だが今回は、≪特殊≫魔族の≪知識の宝庫(インテリゲンチア)≫並みの潜入捜査だ。


「ミストレは裏から回れ。エスカバは左側の窓だ。俺は正面から行く」
「「了解」」

そう言うと、3人は魔法陣を展開する。
しゅぱん、と言う音と共に、3人はそれぞれの場所へとたどり着いた。

「3」

バダップが魔法陣を通して、2人に合図を伝える。

「2」

姿勢を低く屈める。

「1…」

スタートダッシュ直前。

「0ッ、突入だッ!!」


<<ガシャァァアァンッッ>>

と、ガラスの砕け散る音がした。
そのまま建物の中に着地、するはずだった。

着地する前に、大量の何かが館から飛び出した。

「うわっ!?」
「ぐッ!!」
「……ッ!?」

「バダップ、今の何だ!?」

ミストレが魔法陣で連絡を取る。
だが彼も何が飛び出したのかは分からない。
ハッとして、こう言った。

「せ、潜入だッ!!」


ダッと入る。
まず眼に入ったのはアンティーク調の家具の数々。
だが、埃を被っている。それも大量の。

「げほっ」

と、ミストレが咳き込む。
それくらい、埃っぽい。



バダップは、両手に魔力を貯める。そのオーラは赤黒い。
彼は≪紅≫の魔族。つまり、炎や灼熱と言った、とりあえず火のような物を操る。

「…?」

何かが聞こえる。
人の声。否、声と言うより息遣い。
とりあえず、誰かが居るようだ。自分達以外に。
何故ミストレとエスカバが除外できるのか。理由は簡単。その息遣いは

    女だ。


静かに忍び寄る。
後ろを取れば、此方の勝ちだ。

「ばれてないつもりかな?」

と。
少女は言った。

「君の靴、結構足音たててるよ。気付いてなかった?」

あと、潜入方法ド派手だね。と少女。
スッと立ち上がり、くるりと振り返る。が。
振り返る方向が、バダップの方向ではなかった。バダップの角度を少し通り過ぎている。

「………ぁ」

少女は少し言葉を零した。
どうやら振り替える角度ではなく、別の音の様だ。

「…君の仲間って、あと2人じゃなかった?」
「……」
「黙ってるつもりかい?まぁいいや。困るのは君達だしね」

そう言ってふらふらと出口を探す少女。
危なっかしいな、と思いながら少女を見逃すバダップ。
魔法陣を開いて、ミストレとエスカバを収集しようと思った。

その時だった。

<<ヒュゥンッッ>>

と、風を切る音がした。咄嗟に避けるバダップ。
振り返って、其処に居たのは。
≪吸血鬼の巣≫最強モンスター、【ブラッディ・キング】。

「チッ、ミストレ!エスカバ!!今すぐに来いッッ!!」

らしくない叫び声で2人を収集。
その間に魔法陣を発動。

「≪暗黒堕落槍(デス・スピアー)≫ッッ!!」

これは彼のPPスキル、“堕落戦士(ライト・ロスター)”の魔法。
Light loster、光を失った者、と言う意味だ。
ちなみにこれはミストレとエスカバにも共通する。

だが【ブラッディ・キング】はそれをひらりとかわし、≪暗黒堕落槍≫は館の一部を破壊した。

「≪暗黒堕落雨(デス・レイン)≫ッ!!!」

上から広範囲の魔法を仕掛けるエスカバ。
ミストレも≪暗黒堕落雫(デス・ドロッパー)≫と言う広範囲の魔法を次々と落す。
しかし、【ブラッディ・キング】には3分の1程度しか当たらない。

戦っている奥の方で、誰かが倒れる音がした。
先程、バダップが会った、あの少女だ。

「まずいっ…!!」
「バダップ!?」

【ブラッディ・キング】は少女を追った。バダップはモンスターを追う。
訳が分からないミストレとエスカバは、とりあえず後を追う。


「バダップ!!アレやるか!?」

と、館を出たミストレが叫ぶ。大声で。
バダップは軽く後ろを向いて、頷く。

「よし、やるぞエスバカ!!」
「俺はエスカバだッッ!!」


「おいッ!!逃げろ——っ!!」
「えっ?」

と、白髪の少女は振り向く。が。
此処でバダップはかなりまずい事に気が付いた。

少女は眼を開けていない。つまり、この状況が分かっていない。


「ッ!!!」

バダップに諦めの意が出る直前、少女はこう呟いた。


   「≪発言(セイズ)・裂≫」

すると、何か見覚えのあるものが【ブラッディ・キング】を覆った。

そして…

     【ブラッディ・キング】は体を裂かれた。

「ッ!?」

「え、何今の…。」
「…死んだ…?」


「あぁ、モンスターが来てたんだね。そう言う事だったんだ」

白髪の少女は振り返ってそう言った。
少女は、かなり短髪だが、耳の後ろの辺りから少しだけ長く髪が垂れていた。
右眼は包帯でぐるぐるに巻かれていて、左眼は閉じている。
服装は、まるで道端に捨てられた子の様な、軽いものだった。
少女はその次にこう言った。


「僕の名前はエノン。“発言者(セイズ・スペル)”って言うPPスキルの保持者だよ」