二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第七話 ( No.16 )
- 日時: 2011/03/09 21:05
- 名前: ヘカテー ◆5VZ6lwsTJw (ID: qU5F42BG)
『トウヤさーん、お預かりしたポケモンは元気になりましたよ!』
ポケモンセンター内に響き渡る声。それはセンターの管理者、通称「ジョーイさん」と呼ばれる人のものだった。
その呼びかけに応じ、僕は受付でツタージャとヨーテリーを受け取る。
「ありがとうございます!」
ジョーイさんにお礼を言ってセンターを出る。
外は相変わらず心地よい風が吹いている。
先程の演説のせいか、町の人は考え込むように黙っている。
この町には似合わない静粛。
「キャァァァ!!」
それを破ったのは、女性の悲鳴だった。
叫びの方向へ行くと、そこには声の主であろう女性と、子供くらいの大きさの水色のポケモンがいた。
そのポケモンは女性に向かって攻撃をしようとしている。
僕は考える前に動いていた。
「ツタージャ! グラスミキサー!」
ボールから出現したツタージャは尻尾を回転させ木の葉の渦を作り出す。
その渦は水色のポケモンを飲み込んでダメージを与える。
そして渦は弾け、ポケモンはばたりと倒れた。
「大丈夫ですか!?」
その女性に声をかける。
「え、えぇ。大丈夫。ありがとう」
良かった。何ともないようだ。
「この子、プルリルって言うの。最近この町に住みついて悪戯してたの」
「そうだったんですか」
「うん……そうだ、君、このプルリル連れて行ってくれない?」
「え?」
「君、トレーナーでしょ? 水タイプのこの子はツタージャの苦手な炎タイプに対抗できるわよ」
「う〜ん、そうですね。連れて行きます」
ボールを一つ取りだし、プルリルに軽く当てる。
赤い光が発射され、プルリルがボールに収まる。軽い揺れの後、ボールにロックがかかる。捕獲成功の合図だ。
「よろしくな、プルリル。では、僕はそろそろ行きます」
「うん、元気でね」
そう言って僕は次の町、サンヨウシティへ向かった。
「……どうしたのですか? 貴方にも任務を与えた筈ですが?」
「そんなものとっくに終わらせたわよ」
私は捕まえてきたポケモンの入ったボールを乱雑に投げる。
「……良いでしょう」
投げたボールを奴が受け取る。
「ねぇ、ゲーチス」
「……何ですか?」
格下の人間に呼び捨てにされたのか気に入らないのか、奴——ゲーチスが眉を潜める。
「そのポケモン、本当に捕まえてよかったの?」
「クク……当たり前でしょう。このプラズマ団の最終目的はポケモンの開放、貴方にも分かっているでしょう?」
「……」
「次に何をすべきか、分かりますね?」
「……」
黙って私はその部屋を出る。
あいつと一緒にいると不快な気分になる。
あいつは嫌いだ。何を考えているかわからない。
あぁ、苛々する。何かストレス発散できるものは……
「……あ、」
前方から歩いてくる人物。
何度任務に連れて行っても失敗ばかりする役立たずの下っ端だ。(ちなみに今回の任務には連れて行っていない。こんな奴連れて行ったら標的を逃がすのは目に見えてる。)
丁度いい。あいつなら別に傷ついたところで問題ないだろう。
その下っ端が此方に気づき、へへっと笑いながら声をかけてきた。
「あ、任務お疲れです。ト……!?」
下っ端の周りを舞う桃色の花弁。それが触れた部位から噴き出す深紅の血。
「役立たずな下っ端の分際で、私の名を口に出さないでもらえる?」
「ぁ……」
もちろん、返事を聞くつもりはない。
気の抜けた笑いが絶望の表情へと変わり倒れる下っ端。
「大丈夫よ。死なない程度にしておいたから。ね、ドレディア」
『!』
花弁を出現させた主である私のポケモン、ドレディアに笑いかける。
ドレディアの返してくれたその笑顔は、チュリネだった頃から変わらない。
昔のことを思い出し、徐に首にかけていたロケットを開く。
中の写真に写る小さい頃の私と、一人の少年。
「……元気にしているかしら? ……トウヤ……」