二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第二話 『プラズマ団』 ( No.5 )
- 日時: 2010/12/21 21:08
- 名前: ヘカテー ◆5VZ6lwsTJw (ID: PAeJS2fQ)
博士がカラクサタウンで教えてくれたことはポケモンセンターとフレンドリィショップについてだ。
ポケモンセンターはポケモンを回復させるための施設で、何と無料でいくらでも利用できるのだ。
その他にセンターではパソコンの利用、離れた場所にいる人とバーチャル対戦ができるシステム、通称wi-fi対戦が無料でできる。
さらには有料で宿泊施設を提供しており、トレーナーの証であるトレーナーカードを提示すればいつでも泊まることができる。
フレンドリィショップはポケモンに関する様々な道具を販売している店だ。
元々はセンターとショップは別々だったが、今年からセンターと合併した。
販売している道具は多々あり、薬やモンスターボール、戦闘時に自分のポケモンの能力を上げる道具、さらには便箋まで売っている。
一通りの説明が終わり、博士は
「次の街、サンヨウシティに行ったら発明家のマコモに会いなさい。私の古くからの友人で冒険を手助けしてくれるわ。」
それではがんばって! 君たちの旅が実り多いものでありますように! と言って、博士はカノコタウンに帰ってしまった。
それから僕とベルはショップで買い物を始めた。
チェレンはというと、博士の説明を聞かずに街を散策していた。
「傷薬に〜、あ、ボールも買わないと。」
ベルはまだ買い物に夢中だが、此方は必要な物は買いそろえた。
一足先にポケモンセンターを出ることにする。
センターを出ると人だかりができていた。
「なんか広場で始まるらしいぞ!」
目の前を通り過ぎて行った少年が言った。
人だかりの前には奇妙な服装の連中がいた。
人だかりの中にチェレンがいた。
チェレンも僕に気付くと
「トウヤ、こっちに来なよ。」
「何が始まるんだ?」
「さぁね。演説らしいけど。」
「演説?」
そんな会話をしている間に、連中の後ろから一人の男性が出てきた。
緑色の髪をしたその男性は長身でかなりの威圧感があった。
身につけている茶色い服にはわけのわからない紋章が浮かんでいる。
その男性はゆっくりと口を開いた。
「ワタクシの名前は、ゲーチス。プラズマ団のゲーチスです。」
ゲーチスと名乗ったその男性は集まった人を鋭い目で見据え、話を続けた。
「今日みなさんにお話しするのはポケモンの解放についてです。」
その言葉に、僕だけではなく、チェレンも、他の人も少なからず動揺していた。
「我々はポケモンと共に暮らしてきました。お互いを必要としあうパートナー、そう思っておられる方が多いでしょう。」
確かに大抵の人間もポケモンもそう思っているだろう。僕も、そしてきっとツタージャも。
「ですが本当にそうなのでしょうか? 我々人間がそう思い込んでいるだけ……、そんな風に考えた事はありませんか?」
ゲーチスは少しずつ歩みながら、話を続ける。
「トレーナーはポケモンに好き勝手命令している、仕事のパートナーとしてもこき使っている……、そんなことは無いと誰がはっきり言い切れるのでしょうか。」
動揺を隠せない人がだんだんと増えてくる。
「良いですか、みなさん。ポケモンは人間とは違い、未知の可能性を秘めた生き物なのです。我々が学ぶべきところを数多く持つ存在なのです。
そんなポケモンたちに対し、ワタクシたち人間がすべきことは何でしょうか?」
一瞬の沈黙。その後、誰かがひそりと呟いた。
「そうです! ポケモンを解放することです! そうしてこそ人間とポケモンは初めて対等になれるのです。みなさん、ポケモンと正しく付き合うためにどうすべきか良く考えてください。
……ということで、ワタクシ、ゲーチスの話を終わらせていただきます。ご清聴、感謝いたします。」
小さく礼をし、後ろにいた集団が歩き始める。
「ポケモンの……解放……」
「面白くないな。」
「ほう。」
チェレンの言葉にゲーチスが反応する。
「面白くないとは?」
「ポケモンだって人間を信頼しているんだ。だから時にポケモンは実力以上の力を出してくれる。それに野生で過ごすには力の足りないポケモンもいる。解放したらすぐに絶滅するよ。」
「ごもっとも。しかし絶滅するポケモンと、普段こき使われていた、解放されることで喜びを感じるポケモン、どちらが多いかな?」
「トレーナーの方が気持ちを切り替えればいいんだ。そうすれば丸く収まる。」
「人間の心は変わりにくいものです。それに計画には多少の犠牲も……」
「ふざけるなよ。そんなくだらない計画、僕が阻止する。」
チェレンは苛立たしげにボールからポカブを出す。
「……できるものなら。」
ゲーチスは静かにボールを取り出し、投げる。
中から出てきたのは二つに分かれた頭が特徴の四足歩行のポケモン。
青の体は黒い体毛で守られており、背中から生える翼は必要ないと言わんばかりに閉じていた。
「あれは……」
僕は気になって図鑑を見る。
図鑑は認識し、ポケモンの情報を映し出した。
らんぼうポケモン——ジヘッド。
モノズというポケモンの進化体らしい。
そしてその後に、目の前で起こる勝負の詳しいデータが現れた。
ジヘッド Lv42 手持ち残り6
ポカブ Lv7 手持ち残り2
そのレベル差を見て僕は思わず目を疑った。
「チェレン! 無茶だ! レベルの差がありすぎる!」
「それでも僕は勝つ、ポカブ、火の粉!」
「威勢だけは良いですな。ジヘッド、受けてあげなさい。」
「!?」
ポカブから放たれた火の粉は十分に避ける距離がありながらもジヘッドに直撃した。
同じ程度のレベルならかなりのダメージだが、余裕の表情で受けていた。
僕は図鑑を見てみる。
ジヘッドが受けたダメージは5%もない。
「おや、この程度ですかな?」
「ポカブ! 全力で体当たりだ!」
ジヘッドはまたも余裕で受けている。
「ジヘッド、そろそろ終わらせてあげなさい。」
その言葉を聞き、ジヘッドはにやりと微笑み、羽を使い、空へと飛び上がる。
「ドラゴンダイブです!」
青いオーラを纏いかなりのスピードで急降下するジヘッド。
「ポカブ、避け——」
その言葉はすでに遅く、ジヘッドの体はすでにポカブと接触していた。
凄まじい衝撃とともに砂煙が舞いあがる。
「ポカブ!」
「『僕が勝つ』のではないのですか?」
チェレンはその場に倒れているポカブを抱き上げる。
図鑑を調べる必要もない。すでに戦闘不能だ。
「さて、戻ってください。ジヘッド。行きましょう。」
そういうとゲーチスは周りの連中と共に歩き出した。
「チェレン……」
俯いていたチェレンは僕に見向きもせずポケモンセンターに走って行った。
いつのまにか演説を聞きに集まった人たちはその場にはいなかった。
残ったのは僕と、一人の青年だった。
*
あとがき
ゲーチスとチェレンのバトルはゲームにはありませんがオリジナルでw