二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ハリー・ポッター】白と黒の鎮魂歌<2.5話UP!> ( No.10 )
日時: 2010/12/21 20:25
名前: リオ (ID: slitpE5G)

3話 「ダイアゴン横丁まで」

手紙から逃げるために、ダーズリー一家は海の上の小屋へと逃げていた。

ドーン。もう一度、誰かがノックしている。ダドリーが跳び起きて、寝ぼけた声を上げた。

「何? 大砲? どこ?」

向こうの部屋でガラガラガッシャンと音がしたかと思うと、バーノンおじさんがライフル銃を手に、すっとんできた——あの細長い包みが何だったのか、今分かった。

「誰だ。そこにいるのは。言っとくが、こっちには銃があるぞ!」
「だから何だ。」

冷ややかな声が響いた。動物園に居たあの少女だ。
此方を見ると、少女はにやりと悪戯めいた笑みを浮かべた。

それからはハリーにとっては楽しくて仕方のない出来事が起きた。ケーキに食べ物に、—それに、ダドリーに豚の尻尾が生えたんだ。


———

翌朝、ハリーは早々と目を覚ました。朝の光りだとわかったが、ハリーは目を固く閉じたままだった。

「夢だったんだ」

ミカを起こさないように小さくハリーはきっぱりと自分に言い聞かせた。

「ハグリッドって言う大男がやってきて、僕は魔法使いの学校に入るって言ったけど、あれは夢だったんだ。目を開けたら、きっとあの物置の中に居るんだ」

その時、戸を叩く大きな音がした。ミカも目を覚ました様子だった。

「ほら、ペチュニアおばさんが戸を叩いている」
「ハ、ハリー…」

ハリーの心は沈んだ。それでもまだ目を開けなかった。いい夢だったのに……。
トン、トン、トン
「わかったよ、起きるよ」ハリーはモゴモゴといった。
起き上がると、ハグリッドの分厚いコートがハリーの体から滑り落ちた。ミカの上にかかっているローブは恐らく少女のものだろう。小屋の中はこぼれるような陽の光だった。嵐は過ぎた。ハグリッドはペチャンコになったソファで眠っていた。少女は壁を背に寝ている様子だ。ふくろうが足の爪で窓ガラスを叩いている。嘴に新聞を食わえている。

ハリーは急いで立ち上がった。嬉しくて、胸の中で風船が大きく膨らんだ。まっすぐ窓辺まで行って、窓を開け放った。ふくろうが窓からスイーッと入ってきて、新聞をハグリッドの上にポトリと落とした。ハグリッドはそれでも起きない。ふくろうはヒラヒラと床に舞い降り、ハグリッドのコートを激しく突っつきはじめた。

「だめだよ」

ハリーがふくろうを追い払おうとすると、ふくろうは鋭い嘴をハリーに向かってカチカチ言わせ、獰猛にコートを襲い続けた。

「ハグリッド、ふくろうが……」

ハリーは大声で呼んだ。

「金を払ってやれ」

ハグリッドはソファーに顔を埋めたままモゴモゴ言った。

「え?」
「新聞配達料だよ。ポケットの中を見てくれ」

ハグリッドのコートは、ポケットをつないで作ったみたいにポケットだらけだ……鍵束、ナメクジ駆除剤、紐の玉、ハッカ・キャンディー、ティーバッグ……そしてやっと、ハリーは奇妙なコインを一つかみ引っ張り出した。

「五クヌートやってくれ」

ハグリッドの眠そうな声がした。

「クヌート?」
「小さい銅貨だよ」

ハリーは小さい銅貨を五枚数えた。ふくろうは足を差し出した。小さい革の袋が括りつけてある。お金を入れるとふくろうは開けっ放しになっていた窓から飛び去った。
ハグリッドは大声であくびをして起き上がり、もう一度伸びをした。

「出かけようか、ハリー、ミカ。今日は忙しいぞ。ロンドンまで行って、おまえさん等の入学用品をそろえんとな。ほれ、アミ、起きろ—…」

少女はアミと言うらしい。むくり、と少女は起き上がると大きく欠伸をした。
ハリーは魔法使いのコインを、いじりながらしげしげと見つめていた。そしてその瞬間、あることに気がついた。とたんに、幸福の風船が胸の中でパチンとはじけたような気持ちがした。

「あのね……ハグリッド」
「ん?」

ハグリッドはどでかいブーツをはきながら聞き返した。
「僕、お金が無いんだ……」此処でミカがあ!という顔をした。

「それに、きのうバーノンおじさんから聞いたでしょう。僕が魔法の勉強をしにいくのにお金は出さないって」
「そんなことは心配いらん」

ハグリッドは立ち上がって頭をボソボソ掻きながら言った。

「父さん母さんがおまえさん達になんにも残していかなかったと思うのか?」
「でも。家が壊されて……」
「まさか! 家の中に金なんぞ置いておくものか。さあ、まずは魔法使いの銀行、グリンコッツへ行くぞ。ソーセージをお食べ。さめてもなかなかいける。……それに、おまえさんのバースデーケーキを一口、なんてのも悪くないね」
「魔法使いの世界には銀行まであるの?」
「一つしかないがね。グリンゴッツだ。子鬼が経営しとる」
「「こ・お・に?」」

ハリーとミカの声が重なり、二人とも食べていたソーセージを落としてしまった。

「そうだ。だからよ、銀行強盗なんて狂気の沙汰さ、本当に。子鬼と揉め事を起こすべからず、だぜ? ハリーにミカ。何かを安全にしまって置くには、グリンゴッツが世界一安全な場所だ。たぶんホグワーツ以外では。」

アミがそういった。続けてハグリッドも言う。

「実は、他にもグリンゴッツに行かにゃならん用事があってな。ダンブルドアに頼まれて、ホグワーツの仕事だ」

ハグリッドは誇らしげに反り返った。
そして、すぐにロンドンに向けて飛び立った—…