二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ハリー・ポッター】白と黒の鎮魂歌 ( No.6 )
日時: 2010/12/21 15:51
名前: リオ (ID: slitpE5G)

第1話 生き残った男の子とその妹

プリベット通り四番地の住人ダーズリー夫妻は、「おかげさまで、私どもはどこからみてもまともな人間です」と言うのが自慢だった。不思議とか神秘とかそんな非常識はまるっきり認めない人種で、まか不思議な出来事が彼らの周辺で起こるなんて、とうてい考えられなかった。

ダーズリー氏がトロトロと浅い眠りに落ちたころ、塀の上の猫は眠る気配さえ見せていなかった。銅像のようにじっと座ったまま、瞬きもせずプリベット通りの奥の曲がり角を見つめていた。隣の道路で車のドアをバタンと閉める音がしても、二羽のふくろうが頭上を飛び交っても、毛一本動かさない。真夜中近くに、初めて猫は動いた。
猫が見つめていたあたりの曲り角に、一人の男が現れた。あんまり突然、あんまりスーッと現れたので、地面から沸いて出たかと思えるぐらいだった。猫は尻尾をビクッとさせて、目を細めた。
プリベット通りでこんな人は絶対見かけるはずが無い。ヒョロリと背が高く、髪やひげの長さから見て相当の年寄りだ。髪もひげもあまりに長いので、ベルトに挟みこんでいる。ゆったりと長いローブの上に、地面を引きずるほど長い紫のマントを羽織り、かかとの高い、留め金の金飾りのついたブーツをはいている。淡いブルーの眼が、半月形のメガネの奥でキラキラ輝き、夜会花が途中で少なくとも二回は折れたように曲がっている。この人の名は、アルバス・ダンブルドア。

カチッと音がしたかと思うと、街灯が揺らめいて闇の中に消えていった。「灯消しライター」を十二回カチカチ鳴らすと、十二個の街灯は次々と消え、残る灯りは遠くの、針の先でつついたような二つの点だけになった。ダンブルドアは「灯消しライター」をマントの中にするりとしまい、四番地の方へと歩いた。そして塀の上の猫の隣に腰掛けた。ダンブルドアが猫に、

「マクゴナガル先生、こんなところで奇遇じゃのう」

トラ猫の方に顔を向け、微笑みかけると猫はすでに消えていた。かわりに、厳格そうな女の人があの猫の目の周りにあった縞模様とそっくりの四角いメガネをかけて座っていた。やはりマントを、しかもエメラルド色のを着ている。黒い髪をひっつめて、小さな髷にしている。

暫くの間、二人はなにやらとはなしていた。「ヴォルデモート」「ハリー・ポッター」「ミカ・ポッター」…様々な単語が飛び交う。
すると、大きなオートバイが空から—おかしいだろうが、空から—ドーンと降って来て、二人の目の前に着陸した。巨大なオートバイだったが、それにまたがっている男に比べればちっぽけなものだ。男の背丈は普通の二倍、横幅は五倍ある。許しがたいほど大きすぎて、それになんて荒々しい—ボウボウとした黒い髪とひげが、長くモジャモジャと絡まり、ほとんど顔中を覆っている。

腕には毛布に包まれた二人の赤ん坊が居た。漆黒の髪の赤ん坊と、赤毛の赤ん坊。ダンブルドアはマントから手紙を出し、黒髪の赤ん坊—ハリー—と、赤毛の赤ん坊—ミカ—をくるんだ毛布をそっと戸口において、その手紙をはさみこみ、二人の所に戻ってきた。

「生き残った男の子とその妹、ハリー・ポッターとミカ・ポッターに乾杯!」