二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ハリー・ポッター】白と黒の鎮魂歌<2話UP!> ( No.9 )
日時: 2010/12/21 18:55
名前: リオ (ID: slitpE5G)

3話 「出会い・後編」

昼食の後で、爬虫類館を見た。館内はヒヤッとして暗く、壁に沿ってガラスケースが並び、中には照明がついていた。ガラスの向こうにはいろいろなトカゲやヘビが居て、材木や石の上をスルスル這いまわっていた。ダドリーとピアーズは巨大な毒蛇コブラと、人間でも絞め殺しそうなニシキヘビを見たがった。ダドリーはすぐに館内で一番大きなヘビを見つけた。
バーノンおじさんの車を二巻きにして砕いてくずかごに放り込みそうな大蛇だ——ただし、今はそういうムードではないらしい。それどころか、ぐっすり眠っている。

ダドリーはガラスに鼻を押し付けて、ツヤツヤ光る茶色のとぐろを見つめていた。

「動かしてよ」

ダドリーは父親にせがんだ。おじさんはガラスをトントンとッ炊いたが、ヘビは身じろぎもしない。

「もう一回やって」

ダドリーが命令した。おじさんは拳でドンドンとガラスを拳で叩いたが、ヘビは眠り続けている。

「起きないよ」

どこからか声が聞こえて、ハリーとミカは振り返った。
声の主は先ほどミカがぶつかった—黒髪灰目の—女の子だった。
ダドリーはブーブーいいながら行ってしまった。

「何でだい?—あ。」

ダーズリー家では質問が許されていない。ハリーが慌てて口をふさぐ。少女はくすりと笑ってから、「あのね、」と説明し始めた。

「睡眠薬を仕込んどいた。—もちろん俺じぇねえよ?—まあ、もう少しで—っと、起きたみたいだ。」

突然、ヘビがビーズのような目を開け、ゆっくり、とてもゆっくりとかま首をもたげ、ハリーと同じ高さまで持ち上げた。

ヘビがウィンクした—…?

ハリーは目を見張った。慌てて誰か見ていないかと、周りを見回した。
ミカは気づいてないし、少女はクスクス笑いが収まらない様子だ。
大丈夫だ。ハリーはヘビに視線を戻し、ウィンクを返した。
ヘビはかま首をバーノンおじさんとダドリーのほうに伸ばし、目を天井に向けた。その様子は明らかにハリーにこう言っていた

「いつもこうさ」
「わかるよ」

ヘビに聞こえるかどうかわからなかったが、ガラス越しにハリーはそう呟いた。

「ほんとにイライラするだろうね」

ヘビは激しく頷いた。

「ところで、どこから来たの?」

ヘビはガラスケースの横にある掲示板を尾でツンツンとつついた。ハリーがのぞいてみると、『ブラジル産ボサ・コンストリクター 大ニシキヘビ』と書いてある。

「いいところなの?」

ヘビはもう一度尾で掲示板をつついた。
『このヘビは動物園で生まれました』

「そうなの……じゃ、ブラジルに行ったことが無いんだね?」

ヘビが頷いたとたん、ハリーの後ろで耳をつんざくような大声がして、ハリーもヘビも飛び上がりそうになった。

「ダドリー! ダーズリーおじさん! 早く来て蛇を見て。信じられないようなことやってるよ」

ダドリーがドタドタと、それなりに全速力でやってきた。
少女はもう居なかった。

「どけよ、オイ」

ダドリーがハリーの肋骨にパンチを食らわせた。不意を食らってハリーはコンクリートの床にひっくり返った。次の瞬間の出来事は、あっという間だったので、どんなふうに起こったのか誰にもわからなかった。

最初、ダドリーとピアーズがガラスに寄りかかった。次乃中ン間、二人は恐怖の叫びを上げて飛びのいた。
ハリーは起き上がり、息をのんだ。ニシキヘビのケースのガラスが消えていた。大ヘビはすばやくとぐろをほどき、ズルズルと外に這い出した。館内に居た客達は叫び声を上げ、出口に向かって駆け出した。
ヘビがスルスルとハリーの傍を通り過ぎるとき、誓ってもいい。、リーは確かに、低い、シューシューという声を聞いたのだ。

「ブラジルへ俺は行く——シュシュシュ、ありがとよ。アミーゴ」

爬虫類の飼育係はショック状態だった。
ミカは顔面蒼白だ。
「でも、ガラスは、ガラスはいったいどこに?」と飼育係は言い続けていた。