二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■03 「the Dark Clown」 ( No.7 )
日時: 2011/03/16 15:43
名前: 朱音 (ID: JYHezvC8)


 ■03 「the Dark Clown」



 「………小さい時言われませんでした? 人の言うことはちゃんと聞けて」

 さすがにツッコミにも疲れたのだろう。リオの肩は激しく上下し、額にはうっすら汗まで浮かんでいる。その背中から立ち上る覇気に、周りを取り囲んでいたラスボス10人集が一歩後ろに下がった。

 「あー……この能力な……」

 リオは頭をぽりぽりと掻いて、

 「ぶっちゃけ、呪いや、呪い。昔助けた妖精にかけられた呪い」

 10人は声こそ出さなかったが、皆同じ表情をしていた。先ほどと同じく「はぁ?」という表情である。

 「……なぜ、妖精を助けて呪いをかけられるのだ?」

 宙に浮いている暗闇の雲が訝しげに聞く。リオは「あー……」と呟き、どことなく落ち着きの無いそぶりを見せながら、腕を組んで空を見上げた。

 「うん……思い出してみると懐かしいなぁ。その日な、俺暇で暇でしゃあなかったから森…?に散歩行ってん。したらな、なんかな、妖精ぽいんがな、……えっと、罠に嵌っとってん」

 リオは時折ジェスチャーも交えながら、

 「俺割りと正義感強いし、助けなアカン雰囲気やったし、……まあ、助けてん。そんじゃあその妖精がな、「あなたの願いをひとつ叶えてさしあげますぅ〜」とか言うもんやからな」

 言いながら、またリオは頭を掻いた。

 「「俺、旅人なりたいねん。せやから、なんかこう、他んトコにバビュッと行けるような能力つけてや」って言うてん。んーでつけてもろた能力が………」

 リオは眉をひそめて自分の胸をどんと叩いた。

 「コレや。俺の意思一切関係ナッシング」



 その後リオはいくつかの質問に答え、なんとか攻撃はされずに済んだ。だが、コスモスの戦士である可能性はまだ消えてはいない。
 皇帝はカオスメンバーをちょいちょいと呼び集め、神殿の上部へと上がった。10人はこそこそと作戦会議を開く。おもしろい遊び道具が入れば、メンバーの心は一つにまとまるのだ。

 「……あいつはコスモスの戦士なのか? あんなひんっ弱な身体をしているのに……」

 皇帝は口に手を当て、リオに声が聞こえないようにこそこそと喋る。おのずとメンバーは皇帝の近くに集まるため、10人の小さな円が形成される。ちなみに「ひんっ弱」は「貧弱」の最上級。「big」という単語で言えば「biggest」の位置にあたる単語だ。

 「貧弱といえど、あなどれんぞ。あのような能力も持っておるのだし……」

 「けどよぉ、「戦争は無理」とか言ってたじゃねぇか。そんな奴がわざわざ召喚されるモンか?」

 暗闇の雲の言葉に、ジェクトが反論。ケフカ曰く「脳筋」のジェクトにしては珍しく知的な意見だ。

 「我々が対峙した時点であちらも10人揃っていましたし……向こうだけ増えては不公平ですしね。彼はおそらく、この闘争には関係のない人物だと思いますよ」

 アルティミシアは顎に手を当てて、声を潜めて言う。なぜか、クジャの目が輝いた。

 「それじゃあ、あの青年は好きにしていいってことかい? 丁度いい、新しい魔法の実験台に……」



 「いいこと、思いついた♪」



 決して大きな声ではなかった。
 だがそのどこか楽しそうな声は、9人の腹の奥底にまで響き渡った。
 発言者——ケフカの顔には、子供が新しい玩具を手に入れたときのような笑みが浮かんでいる。無邪気ささえ感じるその笑みは、見ているとゾっと背筋が寒くなるような恐ろしさも兼ね備えていた。

 「見たところ、アイツは戦うのが無理そうですし……そしたら、スパイにでもしちゃえばいいんじゃないですかぁ?」

 ケフカはにこにこと笑いながら、

 「カオスの駒じゃないんなら使い捨ても出来るでしょぉ? アイツをコスモス側に送り込んでー、もしこっちのスパイってバレてもこっちには何の損害もナシ!」

 「なるほど……働き方によっては内部から壊滅させることも出来る……ということか」

 エクスデスの言葉に、ケフカは満足そうに頷く。

 「そう! アイツはこの戦いになんの関係もないんだから、どう使おうが自由ってワケですよ! ぼくちん天才♪」

 その提案に、皇帝は満足そうに頷いた。
 
 「おもしろい遊び道具」が入れば、犬猿の仲の二人までもがまとまるのだ。