二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 私と世界の仲間達2 ( No.588 )
日時: 2012/06/23 13:38
名前: りむう@薔薇結晶 (ID: R3ss0lfj)

第35話 「桃薔薇の頂点の桜」




キイイィィ…

そう音を立てて開かれる門はとても不気味だったが、何より、その奥に聳え立つ廃墟の方が圧倒的に不気味だった。
黒い廃墟。それを隠すかのように桃色の薔薇が覆っていたが、隠せるほどの黒さではなくなっていた。

「此処まで不気味じゃなかったはずだけどな…」

「何せ私が遊んでいた頃の此処じゃないから」



  「庭も、門も、屋敷も、その中の家具まで、ぜーんぶもう、眠っちゃったから…」



メアリーの案内で奥へ進んでいくと、その先にはサッカーグラウンド。その真ん中には当然のように『桃色の催眠術師』が待ち構えていた。
そして中でも、彼女が際立っていた。
瞳を閉じ、其処に立っていた。


「…サクラ…!!」


サクラは名前を呼ばれた事に気が付くと、ゆっくりと目を開けた。そこで彼らはチームのある変化に気付く。



「なッ、サクラが…!!」

「キャプテンマーク!?」


そう。彼女の左腕にはキャプテンマークが巻いてあったのだ。
其れが表すのは、メアリーがキャプテンではない事。サクラがキャプテンである事。


「どう言う事だ!メアリー!!」


マークが森中に響きそうな大声で怒鳴った。隣ではフィディオがメアリーを睨んでいる。
それを聞いた彼女の反応はと言うと、



「どう言う事って…貴方達に報告する必要がある?態々敵に『キャプテンを変えたので戦略の変更をお願いします。』とでも言うチームがあるの?」

「そういう意味じゃない!!どうしてサクラをキャプテンにしたんだッッ!!!」

「決まってるでしょ、勝つ為よ」


嘲笑うかの様に顔を歪め、答えを吐き捨てる様に口にした。
フフフ、と見下すような態度で笑うと、すたすた歩きだし、チームに合流した。


「さァて、『あの人』からの命令だし…さっさと片付けちゃいましょ。サクラさん?」

「…大丈夫、そのつもりだから。この後また呼び出されてるしね…」


「お前の言う『あの人』はジュリアの事だろ!こっちは分かってるんだ!!」


と、一之瀬が叫んだ。
メアリーの視線が一之瀬を捕らえる。


「……だからどうしたの?」

「ッ…!!」

「それで感情を揺さぶろうとでも思ったんだ?」

「残念だけど一哉、もう私達に『あの人』の正体がジュリアだってバレてる事はこっちも把握済みだよ。もちろん、ジュリア本人もね」


ジュリアはもう少し伏せておきたかったらしいけどね、と付け足す。
薄ら笑みを浮かべるサクラは今までに見た事の無いオーラを纏っている様に見えた。
一部の者はそれに恐怖を憶えるまでに至っている。


「じゃあ仕切り直しだね。……あ、分かってる?貴方達が勝たないと、貴方達のチームで唯一フィールドチェンジの使える雪の王子様は目覚めないんだからね?ま、勝てないだろうけど」


『雪の王子様』とは、紛れも無く吹雪士郎のことである。
前回の『桃色の催眠術師』戦で奇しくも彼女等の催眠術にかかり、昏睡状態にある。


「お前達に勝って吹雪の目を覚ます!!」

「出来るものならどうぞ?出来るものならねッ!!」





『リトル・クラウン』


フィディオ 豪炎寺 ディラン 

風丸  ヒデ  マーク アンジェロ

  一之瀬  土門  テレス

      ロココ




「へェ…大分貴女の元チームメイトが多いみたいね、サクラさん」

「…関係ない。今はジュリアに尽くすだけだから」




<<ピ———————————ッッ>>



試合開始を告げるホイッスルが廃墟に鳴り響いた。






第35話 終わり