二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 私と世界の仲間達2 ( No.601 )
日時: 2012/08/02 15:18
名前: りむう@薔薇結晶 (ID: q6ctOqAf)
参照: 今年のイナGO映画はダン戦とのコラボと聞いてッッ!!!((バッ

第36話 「心の槍」



前半は『リトル・クラウン』ボールで開始。
FWの3人は、小まめに中距離でパスを展開していく。

対する『桃色の催眠術師』。
新キャプテンとなったサクラを中心にした、バランスの取れたフォーメーション。
だが、何処か彼女を囲み、守っている様にも見えてくる。
否、鳥籠の中に閉じ込めている、が正しいか。


「タラタラ走ってるとボール取っちゃうよォ?」


エルザが一気に突っ込んできた。一瞬の出来事に、ボールを持っていたフィディオは体勢を崩す。
だがエルザはボールを取ろうとはせずに、そのまま妖精のようにふわりとかわしてしまった。

疑問に思いはしたが、そのままドリブルを続けようとした。が。


其処にボールがなかった。



「何ッ…」


振り返ると、ある人物が飛ぶようにドリブルで駆け抜けていく様子が見えた。



「サクラ…!?」

「いつの間にボールを!?」



一方ベンチでは、監督2人が揃って顔をしかめていた。


「これは厄介だな…」

「じいちゃん?どうしたんだよ?」

「今のプレー、見えていた奴の方が圧倒的に少ないだろう。おい、ベンチで分かった奴は居るか?」


ベンチで声をあげる者は居なかった。
気付けばフィディオの足元からボールは無くなっていて、サクラが持っていて。



「もしかしたら彼等は見えているかもしれませんね…」


エドガーがそう言った。


「今のが見えるなら超人だぜ」

「だがジュリアの動きだってあれくらい早かっただろう」



 「彼女と共にプレーをしていた彼等なら、…見えているかもしれない…」




そんな間にもサクラはグングンと前線を突っ切る。風より速く、鋭く。まるで流星の様に。
その後方ではふわふわと蝶の様な不規則なスピードと方向性でメアリーが追いかける。


「アレは、本気になってないな。メアリーが」

「そうだね。まるでバレエを踊っている様だよ」


マークとディランがアイコンタクトを交わし、一気にスピードを上げた。
まるで2頭の一角獣、ユニコーンの様に。


「あっ」


あっという間にメアリーを追い抜いて、マークはスピードを変えずに土門へアイコンタクトを出す。
それを受けた土門はメアリーの前に立ち、彼女の行き場を塞ぐ。


「「“デュアル・タイフーン”ッ!!」」


猛スピードのままのディフェンス技を繰り出す。2つの台風はサクラを巻き込んだ。
これで、サクラからボールを奪う、




      はずだった。


「何ッ…!?」

「Why!?どうして出てこないんだい!?」



中に巻き込まれたサクラは吹き飛ばされもしないで、台風の中で静止していた。
その中で、表情も変えずに彼女は右手の指で音を鳴らした。

すると、見上げても先端が見えない程の巨樹が台風を掻き消すと同時に聳え立った。
フィールド、よりによって『リトル・クラウン』側のゴールの目の前だ。




                             「“桜十字ノ狂踊舞槍”」




サクラがぽつりと呟いた。


美しい笛の音が聴こえてきた。何処から聴こえて来ているのだろうか、と選手は辺りを見回す。


 ドサッ、ザッ。


そんな音が聞こえた。その音がする方にはマークとディランが居た。


「な、んッ…!?」

「ぐッ…!!」


 「何何ィ〜?走り過ぎてばてちゃった訳ぇ?」

 「メアリー、私のFCだよ。別にこの程度でバテる訳じゃないと思うよ」

 「…あら、こんなFC出来ちゃうんですか?」

 「ジュリアも似た様なヤツやってたから出来るかなーって」


スタスタと歩いていくと、マークとディランの前にしゃがみ込むサクラ。
そして、マークの顔を覗き込みながら彼に問うた。


「ねぇ、マーク。

 ジュリアが自分自身を犠牲にしてまで勝とうとした試合、幾つあった?

 あんな欠陥の無さそうな人が、弱点曝け出して、勝とうとした試合。

 勝利の為に、泥塗れに、血塗れになった試合、幾つあった?

 貴方を、貴方達を、チームを護る為に自分を犠牲にした場面、幾つあった?

 ジュリアは自分の為だけに行動する試合なんてあった?



 ……彼女は何も変わってないのに、どうして貴方達だけは変わったの?」


変わる必要なんて無いのに。



そう言った後、彼等は立て続けに痛みだけを受け続けた。

それはサクラの心の中で、『ジュリアが居なくなった2年間の悲愴感』を具現化した槍だった。




第36話 終わり