二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜大江戸イレブン!弐 ( No.16 )
日時: 2011/03/22 14:21
名前: ゆうちゃん (ID: 66DLVFTN)
参照: http://monocro39.blog109.fc2.com/

第十九話『都へ』





”協力してほしい”





ヒロトは黙ってうつむいたままだった。
円堂はついていった。だったら、考えることではないはずだ。
(バダップ・スリード……)
数刻前、突如として円堂の前に現れた彼はそう名乗り、大江戸見廻り隊に協力を要請してきたのだ。
長年、母国の軍に仕えてきた勘が言っていた。こいつにかかわるな、と。気配からして只者ではないことは明らかだった。そんな理由でここに残ってしまったが、同時に後悔してもいた。
(——なんであんな、得体の知れない奴に円堂をついていかせてしまったんだ)
円堂が知り合いだからと言っていたからか。こちらの国にわたってから、自分もずいぶんとぬるい人間になったような気がする。ここがあの国だったら、罰を受けていたかもしれない。

うめき声が聞こえて、ヒロトは顔を上げた。風丸が目を覚ましたらしかった。
「風丸?」
戸を開けると、風丸は上半身を起こそうとしているところだった。
あわてて抱きとめて、起こすのを手伝った。ずっと寝ていたせいか、体が少し汗ばんでいた。包帯にはもう血がついていなかった。
「大丈夫か?痛まないか?」
風丸は何とか起き上がると、ヒロトには答えず、すぐに立ち上がろうとした。
「馬鹿!まだ治りか……」


「佐久間」

風丸がぽつりと言った。
ヒロトは呆然と風丸をみつめた。
「佐久間って、なんであいつが……」
風丸はヒロトの肩に手をかけて立ち上がった。あまりにも自然な動きでヒロトは困惑するばかりだ。
風丸が包帯をはずすと、ヒロトは息を呑んだ。

———ない。……ないのだ。刀傷が、どこにも!

風丸は何食わぬ顔で、そこにかけてあった白小袖に手を通すと普段着ていた着物を着て、窓のそばへ行った。何をしたわけでもないのに、茂人が窓の外に現れた。
「ヒロト!」
ふいに呼ばれて、思わず姿勢をただすと風丸がこちらを振り向いた。
「今すぐ茂人と都へ向かえ!」
「え、はっ!?な、なん……」
『で』といいかけたところを、風丸がぴしゃりとさえぎった。
「返事は!?」
「はいっ!!」
茂人は風丸に黙って目礼すると、部屋の中で困惑顔のヒロトの襟元をつかんで「行くぞ」と言った。ヒロトは何をどうすることも出来ず、ただ茂人に連れられて、窓から大江戸の城下町に身を躍らせた。
落ちる、と思った瞬間ヒロトは茂人の手にぶらさがったまま、凧で空を飛んでいた。
風丸は遠くなっていく二人の姿を見つめながら、くすりと笑った。