二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: HUNTER×HUNTER 短編集 ( No.3 )
日時: 2011/01/03 07:44
名前: 葵 ◆iYEpEVPG4g (ID: 4uYyw8Dk)

        
「銀の蝶」(金の蝶と対で読むことをお勧めします)








         

最後に見えた銀色の羽
儚く散る事を知りながら
それでもまだ夢を見たいと思うのは
傲慢と言うべき事でしょうか

















          
「—殺しに来たの?」

優しく微笑みながら椅子に腰掛けた少女はそう言った。
王様か貴族の城何ぞやにあるような豪華な椅子は、少女には大きく見える。
恐れるような緊張と危機感と、そんな風に可笑しく微笑む少女と。
少女が悟った「殺される」と言う事に恐怖は無かった。

張り詰めた、しかし和やかで哀れむ様な視線は少年を見つめたままだ。
反対に今入って来たであろう方は、疑問を抱いているだろう。
どうして笑ったままなのか。どうして知っているのか。どうして恐怖が無いのか。



 
怖いも何も、どうして死ぬ事が怖いのだろう。
人が何か大切な物を無くすのに恐怖を覚えるなら、命を失くすと言う事が怖い?
自分の肩に乗っている全てを失くすのが、怖いのか。
そう考えた事もあった。だけれど、私の肩には何も乗っていないしもしあるとしたならばとうに失くしてしまった。

吐き気のするこの世界から着える事が出来るなら、それこそ自分の望む事だろう。
生きていてもどうせ短い命。どうせ死ぬなら、悲観的に美しく死にたい。
これは自ら死を望んでいる、と言う事なのだろうか。

だから分からない。
生きるのにも別に不自由は無い。
だけれどこのままこんな終わり方をするのか。それは何かを背負って死にたいと言う人間らしい思いなのか。





































刹那、常人であったろうなら普通に「殺される」筈の攻撃がその少女に加えられる。
前に居る少年が視界から消えた。自然に口物だけ笑ったまま宙に視線を投げる。
避けたいと思ったなら避けれた。だけど、別に未練は無いんだから。

首元に手刀が当てられ止まる。少女は無表情になってその手を見た。



「殺さないの。」

だけど何も言わない。

「殺せないの。」

少年の表情が変わった。少しだけ反応を見せる手。
油断していた腕を右手で掴むと少女とは思えない腕力で立ち上がり投げ飛ばす。抵抗しようと向けたもう片方の手は跳ね除けて床に沈める。

少し思った事がある。もし自分が少年のように人を殺す事を職業としていたなら、自分はどうしただろうか。
それに価値は見出せたのだろうか。
背負うものはあっただろうか。
と言っても私には結局分からないのだから、今私を殺そうとした少年はそのままいつか人生を終えるのだろう。


「・・・そっか。」

悲しそうに歪む顔。それは哀れみともただ悲しいからとも取れた。
だけれど本当に思っていたのは、何だったんだろう。私も分からない。


手を緩めるとさっと振り払いドアの位置まで戻る少年。
綺麗な髪の色だと、思った。


「一つだけ言っておくけど。」

何が何だかよく分からない、そんな表情で少女を見る少年。


「死ぬのが嫌だと思う内に死ねるのは、幸せだと思うの。」


そう、悲しむ事がある内に死ねた方が、ずっと良い。