二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロを小説にしてみた【次はメルトだお!】 ( No.17 )
日時: 2011/03/31 16:20
名前: 夢羽 ◆h1A8iHzIDo (ID: lwyoqLK1)

→続き


駅に近づいてきた。
——神様、お願いです。時間を止めて下さい。
心の中で呟いた、神様へのお願い。

まだ、お兄ちゃんと一緒にいたい。帰りたくない——。
その想いが液体へと変化し、瞳から零れ落ちそうになる。
私は目をギュッっと閉じ、それを堪えた。

あと数十メートルで駅に着く。
これからは、こうやって二人で会うことも難しくなる。

「……あ、雨止んでる」

お兄ちゃんが、器用な手付きで私の傘を畳んだ。
自然にお兄ちゃんから離れ、傘を畳むのをじっと見つめる。

「——お兄ちゃん」
「ん?」
「……やっぱ何でもない」

お兄ちゃんに、『好きだから今すぐ抱き締めて』なんて言えるはずがない。
言ったら、心の中の“何か”が壊れてしまいそうで。

そのとき、私の体がお兄ちゃんの方へ引き寄せられた。

「……ミク、大好きっ……」

それが、お兄ちゃんにとって精一杯のことだったのだろう。
傘を私に押し付けるように返すと、お兄ちゃんは私から離れた。

チラリと見えたおにいちゃんの顔は、ちょっと赤かったような気がする。


END