二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: VOC@LOID挿話集【悪食娘コンチータ】 ( No.31 )
日時: 2011/06/22 14:09
名前: 夢羽 ◆h1A8iHzIDo (ID: lwyoqLK1)

ココロ


“奇跡”
丘の上の研究所に、一人の科学者がいた。
よれよれの白衣に、後頭部で束ねてある綺麗な金髪。
科学者は、同じ金髪をショートカットにした少女の頭に、白いリボンをつけた。

「よし、完成っと」

まだ少し幼い少年の声で、科学者は呟いた。
そして数歩離れ、少女の様子を観察する。
数秒後、少女の目が静かに開いた。

「出来たあぁぁっ!」

科学者は、幼い子供のように歓声を上げた。
少女は、キョロキョロと辺りを見回している。
科学者を視界に捉えると、少女は無機質な声で言った。

「鏡音レン、認識。データをインプットします」

少女の深緑の瞳に、科学者——鏡音レン——が映る。
科学者は飛び跳ねるのをやめ、少女の目を見つめた。

「……私の名前は——?」

少女が、首をかしげながら呟いた。
科学者はしばらく考えて、そして手を打った。

「君の名前は、鏡音リン。よろしく」

科学者は笑い、手を差し出した。
本当の年齢は16,7歳なのだろうが、笑っただけでそれよりも幼く見える。
リンは科学者の手を見て、そして顔を見た。
もう一度手を見て、首をかしげる。

「ハカセ、これは——?」
「そういうことを、まずは勉強しよう」

科学者は、差し出した手をリンの頭に乗せた。
そして優しく撫でる。
一瞬だけ悲しそうな顔をして、科学者は手を退けた。

「ココロもね——」

リンには、それが不思議な響きをして聞こえた。
“ココロ”の意味は分からなかったが、これからそういうことを知っていくんだと思った。
ずっと、永遠に——。