二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ポケモン】ポケットモンスター アスタリスク ( No.289 )
日時: 2011/04/04 13:07
名前: 小雨 (ID: BKd.hc6i)

第53話

主人公スズの所持ポケモン
ルカリオ(ルーク)
コイキング(ギィ)
ユキメノコ(メメ)



111番道路は今まで通ってきた道路と違って随分と歩きやすいと感じていたのだが、次第にゴツゴツとした岩肌が目立つようになってきた。道もそれほど急ではないが、多少勾配を感じる。なんとなく故郷のルネシティを思い出した。
聞けば、このあたりも火山地帯なのだという。やはりルネシティと共通点があるのかもしれない。
それはそうと、フエンタウンは少し標高の高いところにある小さな町であり、ロープウェイという乗り物に乗らなければ行けないらしい。
キンセツシティを出るときに、釣り人のおじさんが教えてくれた。
ありがとうございますと言って町を出たが、ロープウェイとは一体どのような乗り物なのだろうか。縄の道…?
未知の乗り物になんとなくワクワクしていた僕だったが、徐々にその姿が見えてくるにつれ、暗い気持ちになっていった。
「これに…乗るの?」
ロープウェイって不思議なネーミングだなぁと思っていたけど、何のことはないそのままの意味だ。
ロープにぶら下がっているあの小さな箱に乗って、頂上まで運んでもらうというのだろう。
冗談じゃない、僕達の命を支えているのはあの小さなロープだけじゃないか。
張られているロープの先を目で追っていくにつれ、僕は完全に腰が引けてしまった。
ルーク達はさっさと乗り込んでしまったが、僕は中々一歩を踏み出す勇気が出せなかった。
ヒワマキシティのツリーハウスの比じゃないよ、これ。
"スズ、あんまり時間ムダにできないんでしょ?"
ルークが意地悪そうに言う。
"スズはやく"
メメは初めて乗る乗り物に興奮気味のようだ。
僕は覚悟を決めて一歩踏み出した。

ガタンと揺れロープウェイは動き出したが、僕はそれだけで尻込みしてしまった。
徐々に足場が不安定になっていくのを感じる。
高度が上がるにつれルーク達は外を見て歓声をあげたりしていたけど、僕は座席から微動だにせず、硬く拳を握り目を閉じていた。
"スズあそこ、町が見えるよ!"
ルークが下を見て嬉しそうに言ったが、精神を集中させていた僕は最後まで下を見ることはなかった。

"面白かった!"
"またのりたい"
ルークやメメはまた乗りたいなんて言っているけど、僕は二度と乗りたくなかった。
ロープウェイを降りた時にはなんだか膝が笑っていて、地面に転がってしまった。
「…うわっ、なんだこの地面…」
僕が無様に転がってしまったのは膝が笑っていただけではないようだ。
踏み出した大地は予想以上に沈み込んだのだ。
「なんだこれ………これは、灰?」
特有の臭いが鼻を突く。
"スズ、灰だらけだよ"
今転んだせいで、僕の体中に灰がついていた。少し吸い込んでしまったのか、なんだか喉に違和感がある。
「うわ……とりあえずフエンタウンに行こう。町には温泉が湧いてるって聞いたよ」
僕は咳き込みながら言った。
ロープウェイで登ってきた山を今度は若干下りつつ歩き、僕達はフエンタウンに到着した。
フエンタウンはヒワマキシティやキンセツシティと違い、小さい町だった。山間の集落といってもよさそうな規模だ。なんだかのどかな雰囲気だった。
「ごめん、ちょっと早速温泉に…」
僕は大急ぎで温泉に向かった。温泉は無料で開放されているらしく、内心とてもホッとしていた。
看板に従って進み、木造の建物にたどり着く。僕は勢いよくドアを開けた。
「きゃっ…ちょ、ちょっと!」
「え……うわわっ、ご、ごめんなさい!」
勢いよく飛び込んだ脱衣場には、真っ赤な髪をした女の人の姿があった。