二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.105 )
日時: 2011/11/26 23:45
名前: 勾菜 (ID: 9Urj1l4Z)

〜麗菜〜

暗くて、さむくて…自分自身以外の気配も感じない。
不安が募る。
いつも一緒にいた、自身の片割れの気配がしない。

どこ、何処にいるの?

瞼を上げても何も見えない。
見えるのは己の体だけ。

—…どこにいるの?
私はせつながいないとダメなのに…

どくん、どくん。
心臓の音がうるさい。
それに頭もいたい。
それをこらえるようにぎゅっと目を瞑る。
ぱっと脳裏に浮かんだのは、青い髪に不機嫌そうに眇められた蒼い瞳。
不機嫌そうにしていても、本当は優しくて誰よりも主を心配する。
こんな私に大切な名前を教えてくれた。
それなのに。
私がつき放した。
自分の闇を知られたくなくて神位の差を使った。
そんな自分が嫌になって、部屋にもどった。

そこまで思ってハッとする。

そうだ、連れてこられたのだ。この場所に。
私の心が闇に染まったから。
ならば、この闇は。
しばらくして思い至る。

「これは…私自身の闇…?」
「そうじゃ」

自分以外の声が聞こえた。
幾度も聞いた女の声。

「!?」
「ふふ…威勢のよい子じゃのう」
女の姿が見える。
しかし、それを不審には思えない。
ねっとりと何かがまとわりついてくる。

「のぅ、麗菜よ」
ねっとりとした女の声が耳に入ってくる。
「…そなたは大事に思う者がおるのかぇ?」
「いる」
いないはずがない。
自分にはそれだけに大切な人達だ。
「そうか…じゃが、その者たちはどうであろうなぁ」
女は、にたりと口元に笑みを浮かべる。
「なんだと…」

ぱっと女の姿が消え、麗菜の目の前に緤菜が現れる。

「緤菜…?」
「私は麗菜が嫌い。大嫌いよ」
「っ!?!?」
麗菜の瞳にひびが入る。
何と言った、今。緤菜は、なんと言ったの?
そんな心の声に答えるように、緤菜は笑みを浮かべる。
「嫌い、大嫌い。私は麗菜がこの世で一番憎い!」
愕然とした表情を浮かべる麗菜に、緤菜はあざけり笑みを浮かべ、麗菜の背後へと視線をやる。
その視線を追えば、蒼い髪の神将がいた。
「宵藍…」
「だれがその名を呼んでいいと言った」
「え…」
「迷惑だ」
「っ…」
今度こそ立っていられない。
ぼろぼろと、心が崩れていく。何も視えないし、聴こえない。息ができない。

麗菜は手を伸ばした。
その手をつかんだのは先ほどの女。
「裏切られたのか?それはつらかろうに…」
泣き崩れる麗菜を抱きしめる。
「ならば、妾のもとにいればよい。そうすれば…そなたはつらい思いをせずに済む」
その言葉にコクリと頷く。
「その言質、もらったぞ」

言葉と同時に女と麗菜を光が取り囲んだ。

光がおさまる。
そこには、しゃがみこんだ麗菜がいた。
その瞳には、生来のものとは違う、妖しい暗い光が宿っていた。