二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.106 )
日時: 2011/11/29 04:31
名前: 翡翠 (ID: 247YvwPY)

〜緤菜〜

膝から崩れ落ちた私を紅蓮が支えてくれていた。
だけど、そんな支えさえ、鼓動の脈打つ音によって掻き消されていた。

全身に力が入らない。恐怖や孤独に塗り潰されてしまいそうだった。
麗菜どうして……? そんな思いばかりが胸を駆け巡って私はただその思いに抗うように認めないとでも言うかのように歯を食い縛った。
血が滲んでいても気にならない。状況をただ認められなかったの……。

その場に座り込み黙ったままの私を困惑した表情の昌浩と物の怪の姿に変化したもっくんが凝視していた。

重たい空気の中、私はふらふらと立ち上がり歩き出す。
そんな私をもっくんが引き止めた。

「おい、そんな状態で何処へ向かうつもりだ」

もっくんの問いかけに何も答えず立ち去ろうとする。
だけど、もっくんがそれを許すはずがなかった。

「待て、何処へ行くのかと聞いている」

怒気の含まれたその声に私は表情の抜け落ちた人形のような素振りで言い返した。

「……麗菜を助けなきゃ……きっと独りで泣いてる……私が早く向かいに行ってあげないと」

そう、時司大神がなんだ。その血がなんだっていうの?
そんなものは私達二人には関係ない。
そんなことは知らないしどうでも良い。ただ、私から麗菜を取らないで。独りぼっちにしないで……!

それだけの思いで今何処に居るかも分からない麗菜を探すために足を前へと進めていた。

「いい加減にしろ! 少しは冷静になったらどうだ。敵のことを何も知らずに向かって無駄死にするつもりか!」

無駄死に? 誰が?
そんなこと、するはずない。だって私が居なくなったら麗菜は……。

「あ……」

そっか、私まで麗菜のように捕らわれてしまった誰が麗菜を助け出すというのだろう。そんな簡単なことにも気づけないくらいに動揺してたなんて……。

「ごめん……もう、大丈夫」

二人に謝罪の言葉を言う。
そして、同時に心に思った、まずは麗菜を捕らえた者の情報を集めよう、走した中でアイツの言っていた、時司大神のことも詳しく分かるのかもしれない。不安は残るしとても恐い。
 だけど、今の私はまだ独りじゃない。だからこそ、今まで通りの私でいることが出来る。大丈夫、一つずつ解決していけば絶対麗菜を助けることが出来る。だから、今は慎重に動こう。








——麗菜もう暫くの間待ってて

         必ず助けに行くから……どうか、負けないで——







心に誓う。
絶対に麗菜と再会することを。



「えと、それじゃぁ、一度風音達と合流しよっか」

昌浩の言葉に一度頷き、私達は再び歩き出した。