二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.108 )
- 日時: 2011/11/30 00:53
- 名前: 翡翠 (ID: xhrme0sm)
〜緤菜〜
二人と共に来た道を戻ってる最中、私達は遭遇してしまった。
今、会いたくて仕方のなかった人物に。
だけど、その人物の容姿は私の良く知るものとは別のものだった。
黒かった髪は銀色に輝き、瞳は真紅へと変わった姉——麗菜の姿があった。
「……麗菜?」
変わり果ててしまった麗菜にゆっくりと歩み寄りながら言葉を発する。
麗菜の瞳にあったのは確かな殺意と呼べるものだった。
「私は……櫻だ」
櫻? 何を言ってるの?
麗菜の言葉に困惑しながらも距離を縮めていく。
このときの私には気付いていなかった。いつの間にかこの場に居るのは二人だけだと言う事に。麗菜の手には太刀が握られていたという事に。
私は少しも気付くことはなくて、ただ一緒に居たくてまるで吸い寄せられるかのように麗菜の元へと歩み寄ったの。
〜紅蓮〜
明らかに空気が可笑しい。
そう思った、だがそれに気付いたときには既に手遅れで、俺と昌浩は既に敵の手中にはまっていた。
「……おい、昌浩、この気配は」
化生へと姿を変えた俺は昌浩の肩に乗り耳元で話しかけた。
「うん……分かってる」
この忘れもしない嫌な気配。
あの妖怪、廉狼のものだとすぐに分かった。
そして、この空間を生み出しているのもソイツだと言う事も。
「隠れてないで出てきたらどうだ」
周囲に神経を張り巡らせながら何も居ない空間に声を張り上げる。
それから、少しの間の後に依然、姿は見えないものの、あの時と同じ声が場に響いた。
「へぇ。もうこの結界に気付いたんだ。だけど、もう遅いよ。既にあの妹の方には櫻が行っている」
櫻、だと? 聞いたことの無い名だ。
廉狼の仲間だろうか。思考を巡らせていて廉狼の言った言葉で聞き逃してはならないことがあったことに気付く。
待て、妹の方と、言ったか。
そこまで考えがいくと俺は真紅の炎蛇を空間、結界に向けて放ち叫んだ。
「緤菜を何処へやった?」
「フフフ……お前達に為す術は残されていない」
俺の問いには答えず、気配が掻き消える。
クソッ……油断した!
押し黙る俺を前に表情を困惑させ、拳を握り締める昌浩が何かを言おうとしていたが、今の俺はそれを聞く気にはなれなかった。
——今は、自分の無力差を神気へと変えて結界にぶつける意外に考えられなかった。