二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.109 )
- 日時: 2011/11/30 21:22
- 名前: 勾菜 (ID: 0cMbVTdm)
〜櫻(麗菜)〜
胸の奥が熱い。何かに心の臓を焼かれるよう。
でも、それが力をみなぎらせてくれるから、不思議なものだ。
だから、疲れることなどない。ただ、我を忘れそうになるほどの痛みが襲う時もある。
そんなこと気にならない…私に名を授けてくれたあの方のためなら…この命絶えようとも…宿願をかなえたい…
不用心に自分に近づいてくる娘に内心微笑む。
これなら殺すことも容易いだろう…そんな考えも生まれる。
珠櫻から教えられた人間の名前。
麗菜が誰だかは知らないが…ちょうどいい。
「緤菜…おいで」
太刀を腰にさし、手を広げ微笑する。
このまま、懐に入ってきたら殺してしまおう、そう思った。
緤菜はそのまま懐に入り込む。
私は腕をとり、そのまま自分が緤菜にのしかかる形で身動きが取れないように固定する。
「れいな…?」
愕然と眼を見開いた娘に私は笑みを浮かべ、腰の太刀へと手を伸ばす。
「まず…ひとり」
そのまま手を振り上げる。
が、瞬間深紅の炎に襲われ、私はそこから飛び退く。
「…十二神将?」
「ごめんごめん、閉じ込めたんだけど破られちゃった」
「もう…せっかくあと少しだったのに…」
隣にはいつの間にか現れた廉狼が立つ。
「麗菜…」
低い声。私自身には全く記憶にない声。でも…どこか懐かしく感じる声。
その方向を向く。青い髪の神将がいた。
「十二神将…か…全く、どいつもこいつも…私は麗菜ではない、櫻だ。
知らない名で呼ばれるのは不愉快だ」
思い切り眉間にしわを寄せる。
「櫻、どうする?こいつら…?」
隣に立つ廉狼が声を潜めて問いかける。
「様子が見れただけでもよかったわ。でも…あの少年は役に立ちそう」
「あぁ…たしかに」
二人の視線が昌浩に注がれる。
「え…」
櫻は、口元に笑みの形を作り、スッと昌浩を指差す。
「あなたを手土産にしましょうか」
ピンと空気が張り詰めた。
〜青龍〜
俺は麗菜と別れた後、聖域の周りを見て回った。
しかし、考えることは先ほどのことばかり。
考えたところでわかるはずがない、それが余計に俺を苛立たせる。
不意に嫌な予感がした。
それと同時に異様な気配。
俺は何も考えずにその場に向かった。
俺がその場に駆け付けると、騰陀とあの子供が緊迫した面持ちをしていた。
異様な結界の残滓のようなものがある。
「……何があった」
「……何か起きるぞ」
「あれ…麗菜さんは?」
その問いの答えを口にすることなく、俺は背を向ける。
その時の俺は言いようもない、不安に駆られていた。
その不安は、現実となった。
銀髪に真紅の瞳。
普段の暖かさなど微塵も感じられない麗菜が、そこにはいた。
敵であるはずの廉狼と並んで——…