二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.112 )
日時: 2011/12/02 22:53
名前: 勾菜 (ID: nNH22Zc.)

〜櫻〜

さて、どうしてくれようか。
あの神将たちは邪魔だ。
娘のほうは邪魔にもならぬだろう。
そう考えれば自然に笑みがこぼれる。
ならば…

「まずは…あなたたち」
にこりと口元だけの笑みを浮かべ、騰陀と青龍を指す。

「なんだとっ」
苦々しげに眉をひそめた騰陀が怒鳴り返す。
「ちっ…麗菜…正気なのか!」
青龍も同じように怒鳴る。

あぁ…全く、私は麗菜ではないと言っているのに。

「私は櫻。麗菜なんて知らないわ…さて、今すぐその口をふさいであげる」
にこりと笑みを作り、腰の太刀を構える。
「じゃあ…オレはあっちを動けないようにしようかな」
少し弾んだような声音で緤菜と昌浩のほうを向く。
「お願いね」

この言葉だけで十分だった。
私たちはそれぞれの相手へ向かいあう。

「昌浩っ、緤菜!」
騰陀が二人のほうへ駆け寄ろうとする。
「あなたの相手は私。…他へ言ってもらっちゃ困るわね」
騰陀の眼前へと飛び込み、太刀を思い切り振り上げる。
その太刀が騰陀の腹部を貫く。
「ぐはぁっ!」
傷口から櫻の瞳と同じような真紅の血しぶきがあがる。
その返り血を浴びながらも櫻は平然としている。
神将であれば、このぐらいの傷は何とかなる。

だが。

「なに…!?」
騰陀は立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
青龍も目を瞠る。
そのすきを突かれた。
「よそ見はだめだと言ったわよ?」
青龍がハッと前を見るのと、櫻の持つ太刀が己の腹部を貫くのはほぼ同じ。
「っぐ…」
思わず青龍も膝をつく。
櫻は、神将二人をあっという間に抑え込む。

「ふふふ…神将のくせに弱いわね」
血にまみれた顔と服。長い銀髪も血しぶきを浴びている。
それでも平気でいる。
「でも…今は邪魔しないでほしいのよ。…命だけは救ってあげるわ」
そう言って櫻は短い呪を唱える。

どさり、と音がして神将二人は倒れた。

それを櫻は無表情で見つめていた。

それから、くるりと背を向け気を失っているらしい昌浩を抱えた廉狼とともに闇へと姿を消した。

その一瞬前、倒れている緤菜のほうを一度だけ見た。


〜廉狼〜

「じゃあ、キミを連れていかないとね」
ゆっくりと笑みを浮かべながら、昌浩と緤菜へ近づく。
緤菜をかばうように昌浩が一歩前に出る。
「キミの力じゃまだ無理だ」
廉狼は笛を取り出し、不思議な旋律を奏でる。

昌浩と緤菜は苦しみ始める。
ドクンと、心臓が脈打つ。

「苦しいんだろ…?抗わないほうがいい…もっと苦しくなるから」
ぞくりとする笑みを浮かべた。



櫻が神将たちに呪をかけるのと同時に、廉狼の目の前にいる二人も耐え切れずに倒れた。
「これでいい」
満足げに呟き、少年の体を抱え上げ、闇の中へ櫻とともに姿を消した。

だが…その一瞬にあいつが女のほうを見たのは気のせいだったか…?