二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.113 )
日時: 2011/12/10 23:53
名前: 翡翠 (ID: 72/NuTit)

〜緤菜〜

意識が途切れる間際、私が目にしたのは神将二人を相手に容赦なく斬りかかる麗菜の姿と、私を庇い前に立つ小柄な少年の姿だった。

紅蓮名まえを呼ばれて平気だと伝えたかった。
昌浩に庇われてそれが何だか情けなくて困惑してだけど、少しだけ温かかった。
 でも、それよりも私の胸に瞳に焼き付いて離れなかったのは、ほんの一瞬だったけど、麗菜が私を見てくれたことだった。
返り血によって紅く染まったその姿が何故か神秘的にみえたのはきっと気のせいだと思う。それに、麗菜に血は似合わない。

 血に汚れるべきは麗菜でなく私の方なのだ。だから、酷く後悔する、何故さらわれたのが私ではなかったのか、と。
 今回だってそう、私ではなく昌浩がさらわれたのだ。
私の目の前であっさりと。何も出来なかった。

ただ、ただ、私は無力なのだ。
改めてそれを思い知らされた。いっそ、こまま目覚めなければ……。

そんな思いとは裏腹に目覚めは訪れる。
私にはどうすることも出来ないかもしれない。
なのに、生きている価値はあるのだろうか……?


そんな疑問が脳裏に過ぎった直後、身体に伝わる振動によって、私の意識は現実へと引き戻されたのだった。