二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.114 )
日時: 2011/12/11 22:03
名前: 勾菜 (ID: 6u4BhLhh)

〜麗菜〜

暗い場所。
ここには私ともう一人しか来れない場所。
そのもう一人の人物の名を呟く。

「櫻…」

呟いてからふっとため息をつく。
なぜこんなことになったのかと。

櫻は私が作ったようなものだ。だから、彼女の心と私はつながっている。
櫻の意識が時々ここに来る。
彼女の思うこと、みているもの。
全て知っている。…緤菜を殺そうとしたことも、騰陀と宵藍を傷つけたことも。
きっと緤菜は戸惑っているわね…

そこまで考えて、ふと瞬きをする。
気配が一つ増えた。
ゆっくりと瞼を閉じて気配を探る。

「あれは…」
あの気配は…櫻のものだ。
自分の意志ではここには来ることができない。
だから、櫻は引き寄せられたといえばいいのか。

つらつらとそれを考えていると、声が聞こえた。
「誰!」
そう叫ぶ声にハッとして前を見る。

長い銀髪を首のあたりで一つに縛り、触れれば切れそうな鋭さを持った真紅の瞳。
見慣れぬ異国の衣をまとっている、櫻がいた。

「あなたは櫻ね」
「どうして私の名前を…」
驚きに目を見開く姿は髪の色や瞳の色は違えど、同じ顔だ。
「お前は…誰だ」
警戒しながら私に問うてくる櫻は、瞳の奥に困惑の色を浮かべている。

そんな姿に思わず笑みをこぼす。
「私は麗菜よ。あなたが使っている体の持ち主…と言えばいいかしら」
「なっ…だからあいつらは、私のことを麗菜と…」
「そういうことよ」
「ならば、ここはどこだ」
いまだ警戒を解かなかったが、櫻は少しだけ気を緩めたような気がした。
「私とあなたしか入れない場所よ」
複雑な表情をしていたが、櫻はそれ以上何もいわなかった。

じっと、櫻の真紅の瞳を見つめる。
「ねぇ…お願い。緤菜を神将たちを傷つけないで」
「無理だ。あいつらを殺すことを珠櫻が望んでいる」
「お願いやめて…」
「お前に何ができるんだ!?私が外に出て、お前の肉体を使っている限り、お前には何もできないだろう!」
いきり立ったように櫻は声を上げる。
「私は珠櫻を助けたいんだ!…お前にとやかく言われる筋合いはない!
 …何を言っても無駄だ!」

そう言って櫻の姿は消えた。



ああ…私は何て無力なんだろうか。
櫻とここで話すことができるのは、私だけなのに。
緤菜…ごめんね。
あなたを危険にさらすことになってしまったわ…

でも、信じてる。
きっと助けてくれるって———…