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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.116 )
- 日時: 2011/12/16 22:36
- 名前: 勾菜 (ID: aCSbnB08)
〜櫻〜
はっとして目を覚ます。
ぼんやりとする頭で周りを見回し、ほうと息をつく。
頭が痛い。
そう思って額に手を当てる。
手に触れるのは、銀冠。
珠櫻がつけたもの。
それを触りながら櫻は考え込んだ。
あの場で会った娘は麗菜と名乗った。
自分と同じ顔、同じ声。
もし、自分の髪と瞳の色が黒だったら。
きっと、あの神将や娘も勘違いするだろう。
あの娘…麗菜と。
その表情も見てみたい、そうも考える。
自分の銀髪を触りながら、櫻は眉根を寄せた。
血を浴びたせいで、髪がべとつく。
髪をぬぐっただけではだめだったか…
そう思いながら、もう数回拭う。
さすがに、血まみれの狩衣は脱いだ。
今は単一枚。
今、櫻がいるのは珠櫻に与えられた一室だ。
ここに戻ってきた後で、あの少年を廉狼に任して自分は横になったのだ。
そろそろ、様子を見に行った方がいいだろう。
そう思い、寝台から起き上がる。
はたと思いいたって、己の姿を見降ろす。
自分は単一枚。さすがにこの姿では人前に出ることはできない。
どうしようかと悩んでいるときに、声をかけられる。
「櫻よ。そなたの着物を持ってきたぞ」
「ありがとう、珠櫻」
礼を言って、珠櫻から衣を受け取り、手早く着替える。
白の単に黒に近い藍色の袴。
その上に闇色の長衣を羽織って、細い帯で留める形だ。
袴の裾は膝上で、動きやすい。
太ももの辺りからさらしをまき、腕には手甲をはめる。
「…これでいいのかしら」
着替え終わり、ひとりごち、それから、長い銀髪を手早くまとめる。
「さてと…あの子の様子を見に行かないと」
そう呟いて、私は部屋を出た。
麗菜の声が一度だけ響いた気がした。
でも…きっと気のせいね。
そう考えて、そのまま歩みを進めた。
——お願い、櫻……あの人たちを傷つけないで…——
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