二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.125 )
日時: 2012/01/15 19:54
名前: 翡翠 (ID: rBMEYlp6)

〜緤菜〜

目が覚め、アレが夢だと自覚した私だったけど、どうしても麗菜の居たあの場所が気になりどうにかしてこの結界の外へ出られないかを考えていた。
 一番早い方法は結界の破壊だけど……それは霊力の消耗にも繋がるし、破壊すればきっと感づかれるだろう。

そう思い、出て行きたい気持ちもある中、結局どうすることも出来ないでいた。その時だった。


「何を焦っている? 緤菜よ」

背後に神気が顕現する。よく知る緋色の神気。
声を聞き、直ぐに後ろへと振り返った。

「あ……」

目の前にはあの時、傷つき倒れ今は眠っているはずの神将。
金色の鋭く温かい眼差しの持ち主。

「ん? 少し会わない間に忘れたか?」

……紅蓮がそこに居た。

「もっくん……」

口と内心と違う名前が出てしまう。
あの時からそれほど時間は経っていないというのに、紅蓮と呼ぶのは何だか気恥ずかしかった。

「……。もっくんじゃない、紅蓮だ」

腕を組み低く唸りながら言う紅蓮の姿が何だか少し可愛らしく見えて、自然と私の表情は緩み笑みを浮かべていた。

「……ちゃんと笑えるじゃないか」
「?」

小声で何か言われたような気がしたが、紅蓮の次の言葉によって聞きそびれてしまった。

「それで、何を焦ってたんだ?」

その真剣な表情と言葉につい先ほど見た夢のことを話した。

「それは……もしや、予知夢の一種かもしれんな」
「予知夢……」

確かに今までも何度か予知夢を見ることはあった。
そしてその予知夢を見た後、夢同様の出来事が起こることも確かにあったのだ。

「もし、予知夢だとしても、私は今この部屋から出ることは出来ない」

結界が私の出入りを阻むから。
そう、続けて口にすると紅蓮はならば、と続け言った。

「ならば、俺が代わりに行って見てこよう。何、二度も後れをとるようなことはせんよ」

ニヤリとした笑みを浮かべ紅蓮はそう言った。
私としても紅蓮に頼むほかなかった。だから、せめて何も悪いことが起こらないようにと願い言う。

「——無事に帰ってきてね」

真剣な眼差しとともに告げると紅蓮もそれに答えるようにして言ってくれた。

「あぁ、必ず無事に戻ってこよう」

言い終えるとともに姿を消し、やがて神気もこの部屋から離れていく。
私はただ、紅蓮の言葉を今は信じ、此処で待つことにした。