二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.129 )
日時: 2012/01/21 00:28
名前: 翡翠 (ID: r5XOKg3d)

〜紅蓮〜

昌浩を連れ帰り、部屋に戻ると立ち尽くす緤菜の姿を見た。
その後ろ姿は今にも崩れ砕けてしまいそうなほど危うく、脆く——消えてしまうのではないか、と思わせた。

そう思ったからなのか、それとはまた別の思いなのか、緤菜の言葉を聞いた直後、俺は身体の動くがままに行動していた。

「もう、いい。それ以上喋るな」

腕の中、伝わる緤菜の鼓動とその思い。
発する言葉一つ一つがどれだけ緤菜を拘束していたのか……それを見た気がした。

これ以上、辛そうな寂しげな言葉は聞きたくなくて、俺は色々な気持ちが入り混じった抱擁を緤菜にしていた。
 どうして、こんなにも緤菜のことを大切に扱うのか分からなかった。
出逢ったのは数日前のはずで、昌浩に抱いている様な思いとも違う。

それなのに、守れなかった事実が歯痒くて苛だたせる。
俺が緤菜に大して抱いている感情……これは何だ?

腕の中、子供の様に泣きじゃくる姿を見て余計に分からなくなる。
俺にとっての緤菜。
緤菜にとっての俺。
 分からないことだらけだ……だが。それでも、今成すことは分かっていた。これ以上、悲しむ事のない様に、緤菜の姉を取り戻す、それだけが今、俺に出来ることで、成すべき事だと思った。