二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.136 )
日時: 2012/01/27 22:03
名前: 勾菜 (ID: MKQiWlnd)

〜櫻〜

“私”は目を覚ました。
けれど、視界は全て紗がかかったように見えるのだ。
『なんで…』
そう言ったはずなのに、声が出ない。
ふと、後ろに気配を感じた。
『櫻——…』
『!!!』
そこにいたのは自分と同じ顔をした少女だった。
『麗菜…っ!?』
そう言えば、眼前にいる少女はにこり、と微笑する。
『私、全て見ていたの』
『ならっ…珠櫻はなんで!』
どん、と麗菜の体を叩く。
そんな私の肩に彼女は手を置いた。
『利用しようとしているのよ、最初から』
その言葉に愕然とした。
では、あの言葉も優しい表情も全てが嘘だというのか。
『でも…あの人の言葉にウソはない。ただ、貴女を利用するのは本当』
麗菜の言葉が遠くで聞こえた。
『じゃ、あ…私はどうすればいいの…』
『それは、私からは言えないの』
そう言うとスッと彼女の姿は消えた。
それと同時に現実へと引き戻される、不思議な感覚がした。

***

はっと目を覚ませば、そこは自分の部屋だった。
ズキズキと頭が痛い、それ以外はいつも通りだった。
「櫻…起きてるかえ?」
珠櫻の声が、部屋の外から聞こえた。

















このときの私は何も覚えていなかった。
夢の事も、その内容も。珠櫻の真意も。