二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.141 )
日時: 2012/02/02 02:20
名前: 翡翠 (ID: FAB9TxkG)

〜紅蓮〜

歯痒くて歯痒くてやり切れない思いでいっぱいだった。
守りたい者が居るのに。
何も出来ない……何が十二神将最強だ、と思う。
こんなときに何も出来ないのであれば、それはただのお飾りではないか。

天狐の血……それがどれ程に昌浩の生命力を奪うものか。
それはよく分かっている。だからこそ、近づけば発動するその炎に近づくことさえ出来ないのだ。

「くっ……」

苦笑が漏れる。
ただ、悔しく腹立たしい。そんな思いでいっぱいになっていた。
だからだったのか……目の前の存在と出来事しか目に映っていなかったのだ。昌浩のことしか……。

突如、周囲の空気が変わった。
鋭利で冷たい霊気に包み込まれたのだ。
霊気の出所は背後……緤菜からだった。

だが、振り返った俺は驚愕するほかなかった。
緤菜の姿は明らかに変わっていた。


——長く赤黒かった髪は金へと変わり

——鋭く細められた瞳は霊気そのものの様な蒼


其処に緤菜の意思はないように思えた。
変わりに宿っているのは……神の類だろう。

「お前は……誰だ?」
「……」

問いかけても答えが返ってくることはなかった。
何故なら、緤菜が見ていたのは俺でも、昌浩でもなく、此処へ現れたもう一人の人物だったのだから。

緤菜の見据えた先に佇む人物——……櫻がこの場に来ていた。