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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.143 )
- 日時: 2012/02/08 19:10
- 名前: 翡翠 (ID: e7DIAQ8b)
〜緤菜〜
独りなのだと、そう強く思ったとき、身体の内側から響く声があった。
その声は、温かくも鋭い声で。
私は、その声を幼い頃に聞いたような気がした。
——私にはどうしてなのか、父様の記憶がない。
ずっと、それは麗菜も同じだと思ってた。
だけど、そうじゃなかったんだ。
覚えていないのは私だけ。私だけ知らない事実が確かにあったんだ。
それを、今、“知った”
内側から、聞こえた声は、顔も思い出すことの出来なかった、私の父様の声。声は優しく私の中に響いてた。
——もう、辛い思いを抱え込まなくて良いんだ。……緤菜は頑張ったよ
と、そう、言っていた気がした。
初めて聞いたかのように思える父様の声だったけど、凄く安心できて、この人になら身体を預けられる。
……麗菜のことを任せられる。そう思った。
そうして、私の意識は遠ざかっていく。
代わりに、父様の意識がこの身体を使うはずだ、とそう思いながら。
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