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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.150 )
- 日時: 2012/02/19 20:27
- 名前: 勾菜 (ID: xs5T8t9X)
〜櫻〜
私は幾度となく蒼い髪の神将と刃を交えていた。
そのためか、私達は人気のないところにいつのまにか移動していた。
はじめ、神将は一瞬迷うと彼の得物であろう大鎌を召喚し、私の刃をとめた。
「なんだ…さすが神将だわ。強いんじゃない」
再び刃を交え私はにやり、と口端をつりあげた。
「櫻…その体の本当の主…返してもらうぞ!」
怒りに染まった瞳。
その瞳を見つめてからふいに私の視界がぶれた。
ドクン、と胸の奥を灼熱の痛みが駆け抜ける。
思わずそこを抑え、苦悶の声を漏らす。
「う…っ…あ…」
カッツーンと音がした。
音のした方を見れば先程まで、己の手にあったはずの剣が落ちていた。
「麗菜…!?」
先程まで対峙していた神将が驚いたように瞳を見開きこちらをみつめている。
私は麗菜じゃないと言っているのに…
「…っく…そ…」
自分の中にいる麗菜が必死に私の意識を抑え込もうと邪魔をしてくる。
ドクンドクンと心臓の音がする。
うるさい。
うるさい。
うるさい。
私はまだやらなければいけないことがあるんだ。
櫻のために…!
「っあああああっ!!!」
ひときわ強い痛みに襲われ、絶叫する。
言い知れない痛みに胸を押さえる。
そのとき逞しい腕が自身に回されるのに気がついた。
途切れそうな意識を必死につなぎとめ、そちらへ視線を向ける。
「くっ…はな…せ…っ」
「戻ってこい……麗菜!」
耳元でささやかれる言の葉。
それが引き金だったのかはわからない。
私の額にはまる銀冠から鈍い音が響く。
次の瞬間、私…櫻としての意識は無くなった。
その間際にありがとう、という声が聞こえた気がした。
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