二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.151 )
日時: 2012/02/19 21:27
名前: 翡翠 (ID: knWr5sbP)

〜紅蓮〜

其々が対峙している中、俺はただ一人動けないでいた。
理由は二つ。
一つは、昌浩のことだ。昌浩は今も敵の手中におさまっている。
そして、取り戻すために六合と風音が先ほどから隙を窺っていた。

俺も昌浩を取り戻すのに協力しようとしたが、止められた。
自分達に任せてほしい、と。
 だから、俺は今も姿の変わってしまった緤菜のすぐ近くにいる。

もう一つの理由は……この異様なまでの相反する二つの気の影響で気圧されていた。全く……俺はどうしようもなく役立たずだな。

戦場を見回してみる。
と、二人分の気配がこの場からどんどん離れていっていることに気がついた。一つは同胞の……青龍のもの。
もう一つは、あの櫻という奴のだろう。

珍しい組み合わせだ、などと言っている場合ではないのだが。
そう思ってしまった。

「……どうやら、麗菜は負けなかったようだ」

緤菜の姿の時司大神が呟いた。

「どういうこと、だ……?」

その言葉に思わず疑問を呟いてしまう。
緤菜の姉が勝ったということは……あの櫻という人格が消滅したということだろうか?

「ふっ……神将よ。お前の考えは大体があっている。が、少し違うな……そうだろう? 珠櫻」
「……」
時司大神が名を呼んだ瞬間、禍々しかった妖気が更にその妖力を増したかのように思えた。
背筋が冷たくなるとは、こういう状況のときに言うのかもしれない。

「おぉ、怖い、怖い。さて、まぁ、茶番劇はこのくらいにして、そろそろ本気をだすか?」

低いその声で時司大神が言霊を発する。
それは、まるで、全ての時を凍りつかせるかのように鋭い神気と霊気に満ちていた。