PR
二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.152 )
- 日時: 2012/02/20 21:00
- 名前: 勾菜 (ID: 6B38yoz9)
〜青龍〜
櫻と対峙していると、だんだんと場所を離れさせられていくのを感じていた。
何度も何度も。
繰り返し、刃を交えた。
櫻は敵とはいえ、体は麗菜のもの。
だから傷をつけることもできず、振り下ろされる刃を受け止め、はじき返すだけで精いっぱいだった。
そのときだった。
櫻が突然苦しみ始める。その姿に重なるようにして、声が届いた。
ずっと聞きたかった声。
最後に聞いたその声は涙でぬれていて…
——麗菜…
思わず声に出していた。
ひときわ大きな悲鳴を櫻があげる。
俺は思わずその肢体を抱きしめた。
はなせ、とそう言われても離すつもりなどなかった。
「戻ってこい……麗菜!」
その言葉と共に櫻がスッと瞼を落とした。
次に瞳を開けた時は、色は変わっていなくても麗菜の瞳だった。
***
〜麗菜〜
私と櫻が入れ替わる瞬間、私は櫻に一つの提案をした。
それに彼女は複雑そうな表情をして、それからフッと笑みをこぼした。
変な奴…そう言われた。
それでもかまわない、そう返したらいいよ、とそれに承諾してくれた。
うれしかった。
そのまま私の意識は浮上して行った。
重い瞼をゆっくりとあげる。
瞳いっぱいに広がる青。
ずっとずっと言いたかったことがある。
「—…宵藍、ごめんなさい…それから、ありがとう…」
ふわり、と微笑んで告げればぎゅっと抱きしめられた。
一滴の泪がはらはらと流れ落ちた。
PR