二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.50 )
日時: 2011/04/01 22:54
名前: 勾菜 (ID: NTBCloh9)

〜麗菜〜

私は、あのあと自室に戻り、睡眠をとっていた。
最初の夜だけ、二人で過ごした場所。

それから、しばらくして、ふいに目を覚ます。

そのとき、ドクンと、心臓が鳴る。

急に胸が苦しくなる。

いやな汗が背を伝う。

瞬間、脳裏にうつる映像。
それは———…緤菜。

その時、さらに心臓がはねる。
「ッぐ…」

呪縛が疼く。

「っぐぁぁっ!…せ、…せつ…なっ…?」

こんなことは、初めてのこと。

私は必死に、それを抑えつけようとしていた。

これは…緤菜との同調…?

「なんで……」
その時、私の耳に単調だが不思議な音楽が聞こえてくる。

それを聞いた瞬間、私の心は何も感じなくなってしまう。
『おいで…、こっちへおいで…』
その声に誘われるがままに、足を向ける。
部屋を出て、外へ出る。

そのとき、青龍があわてた様子で顕現する。
「おい、どこに行くっ!」

その声すら私には届かない。

その声に返す私の声は私とは、違うモノの声。
『邪魔をするなよ。』

「何だとっ…貴様は誰だ!」
『(フッ)…さぁね。…この娘は連れて行かせてもらうよ。我が主の命なんでね。』
そう言うと、私の周りの空間がグニャリと歪む。

「待て!」
そう叫ぶ青龍の声もむなしく、私はその空間に消える。

「くそっ…」

*            *           *

目が覚めると、何もないところにいた。
ズキンと頭痛がする。

周りを見回そうとするが、体の自由が利かない。
私の体は、鎖のようなもので縛り付けられていた。

目を閉じて周りの様子を探るが、だれもいない。

「ここは…」
『気がついたかい?』

小さく漏らした呟きに返ってくる返事。

「っ!」
『気分はどうかな。』
「誰…ぁッ」
そう問うが体の自由を奪う鎖のしめる力が増す。

『しゃべらないでよ。』
「ぐぁっ…」

鎖が首を絞める。
呼吸ができなくなる。

「はっ、っぐあ」
生理的に涙が浮かぶ。

『キミは、大事な餌なんだから。』

そこで、また先ほどと同じ音楽が聞こえてくる。
再び、心の自由を奪われる。

そこに、また新しい声の主が現れる。
「ご苦労だったな。廉狼れんろう。あとは、我がやろう。」
『お願いします、我が主よ。』

そう言って、廉狼は去る。

「我が呪縛よ、宿体の心の自由を奪い去れ。我が傀儡くぐつとなるように。」
私の呪縛が、牛鬼の声に呼応するのがわかった。

それと同時に、私の五感がすべて奪われる。

私の心に耳に届くのは、牛鬼の声のみ。

「さぁ、我が傀儡よ。お前のもう一人の片割れを、お前の手で葬り去ってしまえ。」
そう言いながら、牛鬼はニヤリと醜く笑う。

「はい、牛鬼様。」
その声にこたえるのは、間違いなく私の声。
しかし、それに感情はこもってはいない。

心の奥底では固く目を瞑った私がいた。

翡翠≫
なんか、ごめん。
本当にごめん。