二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.55 )
日時: 2011/04/04 05:02
名前: 翡翠 (ID: ZGJ.R0ZI)

〜緤菜〜

牛鬼の声だけが脳内に響く。
心とは反対に身体は動き、麗菜を傷つけようとする。
嫌なのに、麗菜と戦いたくなんて無いのに視界はぼやけ、声すら出ない。それがすごく悲しくて恐いと思った。
…何も無いこの場所から《助けてほしい》そう願った。

そう願ったとき一人の人物が頭を過った。
紅い髪の長身の男性。
普段は白い物の怪の姿の…。

——騰蛇…!

私は声にならない叫びを上げてそう叫んでいた。

*    *      *

互いに一歩も引かず傷つけあう麗菜と緤菜。
どちらも、身体に少しずつだが、確実に傷を増やしていた。

「良いぞ、もっとだ、もっと傷つけあい我を楽しませるが良い!」

興奮したかのように牛鬼が言ったときだった。

「誰が傷つけあう、だと?」

低い声音とともに苛烈な緋色の神気が爆発する。

「何者だ!」

あまりに苛烈な神気に牛鬼が振り返る。
振り返った先に牛鬼は紅い髪の長身の男を見たのだった。

「…緤菜は返してもらうぞ」

そう、怒気をはらんだ声音で宣言したのは十二神将、騰蛇だ。

「笑止!貴様一人で何ができる!」

牛鬼はそう言うと麗菜と戦闘を繰り返していた緤菜に命じる。

「我が傀儡よ、先にあの目障りな神将を始末しろ」
「…はい、牛鬼様」

答える緤菜の瞳に光は無い。

「緤菜!しっかりするんだ…!」

騰蛇は声を張り上げ言うがそれすら緤菜には届かない。

「無駄だ、無駄だ、貴様の声は傀儡と化したそやつには届かんよ」

そう、牛鬼が言い終わるのと同時に緤菜が、騰蛇に刀印を結び叩き落す。

「ちっ!」

舌打ちをして、白炎龍を神気で作り出し緤菜の術を相殺する。

「おい!目を覚ませ…!」

そう、何度も叫び、神気と霊力の激しいぶつかり合いが続いた。


その様子を見ていた牛鬼が呟いたときだった。

「神将が倒れるのは時間の問題だな」

スゥと大鎌が牛鬼に向けられた。

「その前に貴様の首が飛んでいるだろうな…!」

鋭く冷たい声音。

「貴様!いつの間にっ!」

驚く牛鬼の前に立ちはだかるのは、十二神将の…青龍だった。