二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: (戦国BASARA3)堕落して舞え ( No.21 )
日時: 2011/01/11 19:32
名前: てと (ID: slitpE5G)

第弐話「幸せ」


あの後帰ると、特に怒られる事も無く、心配されることも無く普通に時間が過ぎて行った。
分かりきってでも居たのだろうか。

「あの、…三成様……」

瞳を伏せがちにおずおずと奏が三成に声を掛ける。
三成は素っ気無く何だ、と問えば奏は安堵したような、けれど何処か寂しいような感情を覚えた。

「その、咎めたりしないのですか……」
「何故咎める必要がある」
「そ、れは、……仕事に、失敗して、………」

耐え切れなくなったのか今にも涙が零れ落ちそうな奏を見て三成は多少戸惑うも、すぐに答える。

「分かりきっていたことだろう。家康も護りを強化しているだろうからな」
「っ………ごめ、なさ…」
「っ泣くな!」

安心したやら戸惑うやらで零れる涙を三成が慌てた様子で乱暴に着物で拭う。

「何故泣く!」
「安心、っして…」

ぽろぽろと止まらない涙に自分でも戸惑いながら奏が答える。

「安心して泣く奴が居るか! 笑え!」
「っは、い…!」

奏は涙をごしごしと拭い、可愛らしく笑みを浮かべた。
それを見た三成が真っ赤になったのは秘密。


「……幸せそうだねぇ…」
「妬みでしょうか? 猿飛佐助」
「…どうせ俺様には可愛い恋人が居ませんよっと」
「恋人未満、ですけど」

はぁぁ、と重い溜息を吐いたのは奏と三成の様子を伺っていた佐助。
奏はそんな佐助に冷たい目線を投げかける。

「酷い、そんな哀れみの目しないでよ…俺様が哀れみたいじゃん」
「哀れでしょう、本当に」

遂に天井裏で体育座りをして「の」の字を書き始めた佐助に奏は溜息を吐いて放置しておくことにした。
佐助の相手をしているより、女中の手伝いをした方が時間を有効に使えるからだ。

「と、いうか何故猿飛は居たのでしょう…」
「どうされました?」
「いえ、何も」

ふふ、と誤魔化すように笑い女中の手伝いという事で昼餉作りに取りかかかる奏。
女中達の配慮により、奏は何故か三成のを作ることになってしまった。
女中曰く「三成様も奏様の昼餉なら食しますわ」だそうだ。

「(食の細さも何とかなりませんかねえ…)」

ぼうっとしていたら女中に呼ばれているのも気付かなかった様子だ。
心配そうに顔を覗き込まれた。

「大丈夫ですよ」

やんわりと柔らかい笑みを浮かべて奏が女中に言う。
女中は安心した様子で笑い、作業へと戻っていった。

「ついでに甘味でも作りましょうか……」

宜しいでしょうか、と女中に許可を貰えば奏はすぐに取り掛かる。
そして、出来上がった昼餉×2と団子×2人前を持ち(流石に一度では運べない)三成の部屋を訪れる。
結局、奏は三成に無理矢理にでも食べさせたのだった。


幸せ
 (貴方の傍に居れるだけで)(幸せなんです)