二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: フェアリーテイル〜無の滅竜魔導士〜8話更新 ( No.15 )
- 日時: 2011/04/22 21:22
- 名前: アビス (ID: dFf7cdwn)
9話〜ばら撒かれる不穏な影〜
「さてと。引き上げるぜ、おめぇら!」
ディオはそう言うと、自分のギルドのメンバーが
ついて来ているのかも見ずに走り出した。それを見て、メンバーも後を追った。
「ディオさん。いいんですか?あいつら、死んでないかもしれないんですよ?」
「いいんだよ」
ディオは少し笑みを溢しながら言った。
「あれでくたばったんじゃこの先やっていけねぇよ。
竜の子。滅竜魔導士ならなおさらだ」
「ディオさん。あの滅竜魔導士のガキ知ってんですか?」
メンバーの問いにディオは答えなかった。だが、その笑みが何かを知っている笑みなのは
誰から見ても間違いないものだった。
(ザルチルーニの子、シト。くくっ。こりゃ、『竜王祭』の日も近えかな?)
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—パラッ!バラバラッ!—
「い・・・・生きてるの?」
頭を押さえ伏せていたルーシィが起き上がる。
「皆無事のようだな」
エルザは既に立っていて、周りの状況確認をしている。
フェアリーテイルのギルドのメンバーも次々に起き上がる。
皆、今起こった状況が把握しきれていない様子だった。
そんな中、最初に叫んだのはシャーナだった。
「シト!大丈夫!!?」
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
シトが肩で大きく息をしている。汗もびっしょりだ。
「良かった。皆無事なんだね」
「シト。お前さん、何をしたんじゃ?」
「別に、消滅の膜を広げて皆を囲んだだけだよ。
けど・・・・結構・・・・厳しいかな」
シトはそう力を振り絞ったように言うと、そのまま倒れこんでしまった。
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「・・・・・・」
シトがゆっくりと目を開ける。場所はフェアリーテイルの医務室。
シトは起き上がると、一つ大きく伸びをする。
「もういいの?」
と、そこに現れたのはシャーナ。それにシトが軽く微笑んだ。
「うん。もう平気。ありがとう。・・・・・何笑ってるの?」
シトは言葉の途中でシャーナが笑いを堪えているのが見えた。
それにシトが不機嫌気味に言う。シャーナは笑みを浮かべながらごめんごめんと謝った後続けた。
「少し前とはえらい違いと思ってね。以前の君なら、そんな風には笑わなかったから。
ちょっと驚いた。・・・やっぱり君は人が嫌いな訳じゃないんだよ」
「どういうこと?」
シャーナの言葉の意味が分からなかったシトが尋ねると、シャーナは人差し指を立てて言った。
「ずっと思ってたの。君はよく人間は嫌いだって言うけど、本当は違うんじゃないかって。
それで、今まで一緒にいて分かったの。君は人間が嫌いなわけじゃない。むしろ好きな方。
君は人間が大好きだけど、自分の魔法で消えてしまうのを恐れて距離を置いていたって。
君が恐れていたのは人間じゃなくて自分の扱う魔法そのものなんだってね」
「・・・・・・」
「だから君は最初、人に向かって魔法を放つことを躊躇っていたのよ」
「でもこの感情は間違いなく、人間に対する嫌悪感だ。
自分でもどうして僕はこんなにも人間を嫌っているのかが分からないんだ。
シャーナやギルドのメンバーは良い人なのは感じてる。けど・・・・・」
シトは自分の中の葛藤に頭を抱える。頭では分かっているが、心の底からにじみ出てくる
憎しみがじわじわとシトを侵食していく。
「人間嫌い、昔はここまで酷くなかったって言ってたよね。
何か原因があるんじゃないかな?ほら記憶を失う前はどこにいたのかとかさ」
シャーナに言われ思い返すシト。だが、覚えているのはザルチルーニといた頃の記憶と、
後はほとんど人気を避けて歩んだ様々な道程度。
重要な手掛かりとなる記憶だけ全く蘇ってこない。
「分からないか」
シトの気持ちを察してかシャーナがそう言った。
「まぁ、その内思い出すよ、きっと」
じゃね。シャーナは最後にそう言って医務室を出て行った。
それを見届けてから、シトはベットに倒れこむ。
「ザルチルーニ」
シトはそう呟くとそのまま目を閉じた。夢だけでもザルチルーニに会うために。
深い深い眠りについた。
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どこか分からない火山口。そこに住む者の前に来客が来た。
「久しぶりだな、イグニール」
「ザルチルーニ」
イグニールと呼ばれた者は歯を剥き出しにザルチルーニを威嚇する。
ザルチルーニをはぁ、とため息をつく。
「そう威嚇するなよ。ちょっとした挨拶をしに来ただけだ」
「お互いに干渉することは禁じたはずだ」
「少しぐらいの挨拶は構わないだろう?・・・・おまえんとこの奴のギルドにシトが入った。
あいつは人間を自分の魔法で消してしまうんじゃないかと恐れているからな。
その点じゃ、あのギルドなら安心だな。あそこは強者が多く集ってる。
シトの人間嫌いも直っていくだろうな。・・・・そういえばあそこにはメタリ・・・・」
「挨拶だけのはずだ。それ以上下らぬお喋りを続けるつもりなら・・・・」
イグニールがゆっくりと立ち上がる素振りを見せる。それを見てザルチルーニが言った。
「分かったよ。悪かったな」
そう言ってザルチルーニはイグニールの元を去っていく。そして最後に振りむきこう言った。
「話の続きは『竜王祭』でな。じゃな、イグニール」