二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: フェアリーテイル〜無の滅竜魔導士〜11話更新 ( No.18 )
- 日時: 2011/07/01 09:26
- 名前: アビス (ID: dFf7cdwn)
12話〜餓狼の晩餐からの刺客〜
「ここが実験場?」
「そう!」
三人が着いた場所は大きな荒野のど真ん中。そこには一つ、
大きく陥没した場所があり、シトたちはその丁度縁にいる。
「じゃあ、あそこに浮いてるのが?」
シトがその陥没した場所の中央に浮かんでいる物を指差す。
鍵のような形をした、黄土色の物だ。
「たぶんね〜〜〜。さてと、どうやって取ろうかな?
幾ら私たちでもあの重力場の中心に身を投げたらペシャンコだろうし」
シャーナが顎を摘まんで考えていると、徐にサクラが前に出た。
そしてそのままシトの腕を取る。
「ちょっ!!サクラ!?」
シトが慌ててサクラの腕を振り払おうとした。今シトの体には魔力の膜が張られている。
それは高重力を消すためのものだが、それだけではない。
他のものも消す消滅の魔力なので、幾らサクラでもそこに腕を突っ込むのは不味い。
シトはそう思ったが、サクラの腕はなんともない。
サクラの腕には可憐な花びらが舞っている。おそらく両方に危害が出ぬよう
上手く魔力をコントロールしているのだろう。
サクラはシトが落ち着いたのを見てから、シャーナの方に顔を向けた。
「私たちがあの鍵を取ってくる。シャーナは待ってて」
そう言うと、サクラはシトの腕を掴んだまま更に一歩前へと出た。
もう一歩前へ出れば完全に陥没地帯の中に入る。
「サ・・・サクラ?」
もう一度サクラの名を呼ぶシト。サクラは今度はシトの方を向くと口元に笑みを浮かべた。
「行こ、シト」
「ええ!?ちょっとぉぉぉおおぉ!!」
サクラはそのままシトの返答を待たずに超重力地帯へと滑りこんでいった。
勿論、シトを連れて。その様子を覗き込みながら見ていたシャーナが呟いた。
「あ〜〜あ、行っちゃった。まぁ、大丈夫か、あの二人なら。
・・・・・じゃあ、私はこっちの用事を済ませちゃおっか」
そう言って振り返ったシャーナ。その後ろにいたのは・・・・・・。
————————————————————
「ってて〜〜〜!」
無理やり引っ張ってこられたシトは上手く地面を滑れず、最後にはこけてしまった。
そんな様子を見たサクラがシトに手を差し出す。
「大丈夫?」
「大丈夫・・・・だけど・・・・・・」
シトはそこで言葉を切ると、サクラの方を何か言いた気な表情でじっと見る。
それにサクラは不思議そうな顔で首を傾げる。
「どうしたの?」
「急に腕引っ張ってこんなところに連れきといて、どうしたの?はないと思うよ」
幾らシトが魔法で重力場を消せると言っても、急に引っ張られてもし
体を覆う魔力の膜を多くしていなかったら一大事だったのだ。
その言葉にサクラは少しぽけっとした後、ああ、と言った顔で口を開いた。
「シトの魔法ならこれぐらい大丈夫って、信じてたから」
「ああ、そう・・・・」
シトはそれ以上追求することを止めた。そして気を取り直すと上に浮かぶ鍵を見上げた。
「あれを壊せばいいのかな?ねぇ、サク・・・・・」
—グシャーーーーン!!!—
「サクラ!!!」
————————————————————
「どうしてこんな所にいるのかな?馬車使いさん」
「おやおや、なんというお言葉で」
シャーナの後ろにいたのは三人をここまで連れて来てくれた馬車使いの人だった。
「気付いていたのでしょう?初めから」
馬車使いの人はニコニコしながらシャーナに話しかける。それにシャーナも笑顔で答える。
「ま〜〜〜ね〜〜〜〜。前に押し出されて吹き飛んだわりに、君は馬車より随分と前の方に倒れてたし。
それに君がいた場所には地面にめり込まれた跡がなかったから。
馬の方はばっちしあったのにね。君、演技苦手でしょ?」
「私は嘘が苦手でしてね」
自分の失敗になんも問題がないかような素振りで言う。
先ほどまでの馬車使いの男は既にそこになかった。
シャーナはこの男に妙な違和感を感じていた。それはこの男が『何もしていないこと』。
この高重力の中で魔法で反発や消し去っている様子がないのだ。
ただそこに当たり前のように立っている。
「さて、私がここにいる理由・・・・・お分かりですよね?」
「スケープゴート・・・・・かな?」
「ご名答。魔法局が魔法開発でこれほどの失敗があったとなっては、
これからの事業にいろいろと支障がきたすようでしてね。
そのためにもこの大きな異常を別の者のせいにする必要があるのです。
そのためにわざわざ評議院には話を通さず、元々重力の魔法が使える者がいるギルドに
直接依頼を届けたわけです」
つまりは魔法局の信頼を保つために、濡れ衣を着せようということだ。
シャーナは事情を把握した後、ため息を吐いた。
「でも、どうやって私たちのせいにするの?こんなの人一人の魔力の暴走でどうのってレベルじゃないし、
それを知った私が濡れ衣を着たまま黙ってると思うの?」
「大丈夫ですよ。公式では成らず者が魔法局に盗みに入り、開発途中の重力を操る魔水晶を強奪。
その後それを使用し、魔水晶は暴走。巻き込まれたあなたは死ぬ。仲間の皆さんには記憶操作で
あなたの事は完全に忘れて貰う。これが私たちが立てたあらすじです」
笑顔でとんでもないことを語る男。
「君、魔法局の人じゃないよね?」
「勿論。魔法局の方々は魔法を生み出すスペシャリストであって、扱うスペシャリストではない。
私は魔法局に雇われた暗殺専門の闇ギルド『狼餓の晩餐(ウルフ・ド・ハング)』のアキと申します」
アキはそう挨拶した後、シャーナに向かって襲いかかった。
その手には小型のナイフが握られている。
「尋常にその首、取らせていただきます」
アキはそのナイフを振るうが、その刃はシャーナには届かなかった。
シャーナはジャンプしてアキの後ろを取る。それにアキは一つため息を吐いてから言った。
「素直な子の方が、おもてになりますよ」
その言葉にシャーナはべーー、と舌を出した。
「素直に首を切られるのがもてる子なら、私はもてなくてもいいよ〜〜」
「では、無理にでも素直な子になって貰います!」
「やれるものなら、やってみなよ!」