二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: フェアリーテイル〜無の滅竜魔導士〜2話更新 ( No.7 )
日時: 2011/02/08 12:28
名前: アビス (ID: U3CBWc3a)

3話〜無と重力と叫び声〜




「本当。君、面倒な性格してるよね。それでよくギルドに入ろうと思ったよね」

「うるさいな。そんなのは僕の勝手でしょう?」

町の外で待機していたシトに、シャーナが現れてそう言った。
シャーナが受けた依頼は調査。

ウルキナと言う町の近くで先日、夜中に大きな轟音と衝撃がおき、
朝町の人がそこに行くと、どうみても人の手では出来ない大きなクレーターがあったそうだ。

そこには何かの足跡があり、それは森の中へと続いていた。それが何なのか調査に行った
人々も消息を絶って戻ってこないらしい。その事件の解決をするのが今回のシトたちの依頼内容。

「それで、町の人から詳しい事は聞けたの?」

「ええ。どうやら、あれから度々夜中に妙な叫び声が、森の方から聞こえてくるみたい。
けど、それが町に何か被害を与えてるってことはないみたいよ」

「なら、別に放っておいてもいいんじゃないの?」

「そうもいかないでしょ?さ、今度はそのクレーターのある場所に向かってみましょ」

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「これが実物ね〜〜。思ってたよりも随分でかいね」

「そう?僕は思ってたよりも小さいと思ったけど」

二人が言い合っているクレーターの大きさは直径150メートル前後のクレーター。
ここで相当な衝撃があったのは確かである。

「・・・・・謎の足跡はもう消えちゃってるね。森の方に続いてたってことはあっちってことよね」

シャーナの指差した方向には生い茂る奥深い森がある。シトはそっちの方を目を凝らして見る。

「何か嫌な雰囲気を出してる。あの森・・・」

「そう?・・・まぁ、どっちみち森の方も調べるつもりだったから行きましょう」

————————————————————

「気持ちいい所ね、ここ。空気も綺麗で」

大きく深呼吸しながシャーナが言った。

「・・・・・何でこの依頼受けたの?」

シトの問いにシャーナは少し考えてから

「こういう不可思議な事件の方が竜探しに近づけるかなって思って」

「ザルチルーニはこんな人に迷惑をかけるような行為をしないよ。現に昔から・・・・」

「人は数年経てば簡単に変わるものなの。勿論、それは人に限ったことじゃないと思うよ」

「・・・・・」

シトは口を閉じてシャーナの方を見た。何時も同じように常に微笑しているかのような表情だが、
どことなくその表情が悲しく見えた。どうしてそう見えるのかはシトには分からない。と・・・

—シャアァァァァァァァァァァァ!!!!—

目の前に二匹の大きな蛇が現れた。その体はまるで鉄で出来ているかのように光っている。

「鎖乃大蛇(ツガリノオロチ)。夫婦なのかな?」

「そんな呑気な事言ってないで!来るよ!!」

大蛇は二人に襲いかかった。二人は二手に別れ、一匹ずつ相手にする形になった。

「おっきな蛇ね〜。・・・・けど」

地面を滑るようにして移動してくる大蛇のシャーナは手を前にさした出した。

「10倍(ディス)」

シャーナがそう呟くと大蛇の体がまるで上からとてつもない何かが乗っているかのように潰れ始めた。
シャーナは手をそのままにして近くにあった岩を軽く蹴った。

「0倍(レイ)」

軽く蹴ったにも関わらずその岩はフワフワと飛んでいき、大蛇の真上にさしかかった。と、シャーナが叫んだ。

「100倍(サン)!!」

岩は今までのフワフワ感をなくし、まるで隕石のように真下に落下した。真下にいた大蛇は
当然、無事に済むはずもなくそのままペシャンコになった。

「私の重量(グラビティ)の前じゃ、敵じゃないよ」

「随分、惨いやり方するんだね」

と、そこに片が着いたのかシトが遣ってきた。

「そう?・・・・あれ、蛇は?逃がしたの」

シトの方に大蛇との戦闘の痕跡が見られずに、シャーナが尋ねると、シトは首を横に振った。

「ちゃんと消したよ」

「でも、全然戦った痕跡が見られないんだけど?」

「そりゃあそうだよ。僕の魔法は相手にダメージを与える魔法じゃなくて、消す魔法なんだから」

「相手を・・・・消す?」

「そう。こんな風にね」

シトはそう言うと木の幹に触れる。と、それが跡形もなく消え去った。
シャーナがそれに目を奪われていると、シトが続けた。

「これが僕の魔法、無の滅竜魔法。ナツとか言う人も多分火の滅竜魔法を使うんでしょ?」

「確かにね。でも・・・・」

シャーナは木の幹があった場所を見た。今は何もないその空間。
何かとても遣る瀬無い気持ちになった。それを感じてか、シトは薄く笑う。

「ザルチルーニが言ってたっけ。俺は他の竜たちと比べて異形の竜だって。
・・・・だから多分、そんな竜から教わった魔法を持つ僕もきっと、普通の人間じゃない。
だからきっと、人間が好きなれないのかな?」

「普通の人間じゃないね〜〜」

シャーナは少し考えながらそう言って、また何か言おうとしたがシトがそれを防いだ。

「こんな話ばっかしてないで先に・・・・」

—グオオオオオォオオォォォォオ!!—

「きゃあ!!」

「っつ!!」

突然の森に響く叫び声。それに耳を塞ぐ二人。

「な・・・何今の?」

「多分、今のが夜中に聞こえる叫び声ってやつなのかもね。行ってみましょう」

二人が叫び声が聞こえた方へと走って行った。すると、途中から木が薙ぎ倒されているのが見えた。

「叫んでたモンスターがやったのかな?」

「さあね。取りあえず行ってみればわかるでしょ?」

しばらくすると、大きく抜けた部分に出た。そこで見る光景に二人は目を奪われた。
魔物と呼ぶにはあまりにも可笑しい生物が一匹。まさしく怪物と呼ぶ方がふさわしい生物がそこにいた。