二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ☆参照500突破!!“冬の温泉旅行記” ( No.101 )
- 日時: 2011/04/03 17:00
- 名前: 凪 (ID: M8vlMd6.)
冬の温泉旅行記
【プロローグ】
林田 修は雪道を朝早くから車を走らせていた。
今日は大物芸能人が来るとかで、旅館スタッフ全員で朝早くから準備を
する。もちろん、林田 修もその一人。旅館につとめて20年がたって、
芸能人が自分が働いているところに泊まりに来るなんて思ってもいなか
ったことだった。しかし、芸能人だからってそんな朝早くから出勤する
ことはないだろう。
林田は運転をしながら時計を見た。朝7時。集合時刻が7時30分。
間に合うよな—。
目の前には林田がつとめている旅館があった。創業500余年とかで、結構
古いが、建物はしっかりとした造りになっている。敷地面積は大体、
東京ドーム6つ分と聞いているが、そうには見えない。そして、この旅館
の近くには大きな湖がある。たくさんの木に囲まれ、今はたくさんの雪
に—思い出した。今日はホワイトデーだ。確か、ちょうど一か月前に
もらったような気がする。とりあえず、近くのコンビニとかで妻に買っ
ていこう。
林田は今まで木に囲まれて見えなかった湖の周りをカーブする。
すると、目に信じられない物が映った。
このようなことはあってはならない。
林田はハンドルから左手をはずし、目をこすった。そうだ。疲れている
のだろう。昨日もあんまり寝ていないし。
林田はゆっくりと目を開けた。
だが、消えていなかった。
幻ではなかった。
髪の毛が長い女の子が真っ赤なワンピースを着て湖に立っている。
—いや。浮いている。何故?何故だ?
林田は驚いてブレーキ踏み、車から降りて湖の近くまで来た。
足元を見る。
雪が冷たい。足がもうすでにマヒしている。
林田は顔を上げる。
しかし、湖の上に少女はいた。
夢か—?
林田は、ほっぺを両手で強くひねった。
—痛い。
ほっぺが、ヒリヒリする。—ということは、これは現実。ならば—。
「おい!君は何をしている!こっちに来ないか!」
林田は大きく息を吸って、少女に向かって叫んだ。
もしかしたら湖が寒さで凍っていて、遊んでいたらたまたまドボン、だ
ったのかもしれない—とも思ったが、目に映っている少女はそうではな
い。足が完全に浮いているのだ。それと、外見から見ればこの少女は
12歳くらい。身長は150くらいはある、と思ってもいいだろう。こんな
年にもなれば、やってはいけないことだって分かるはず。
少女は林田の声に気付いたのか二ヤリ、と目を細めて笑った。
—気持ち悪い。寒気がする。怖い。怖い。
林田は恐怖のあまり体が固まってしまった。金縛りだ。
ザッ、ザッ、ザッ
少女が林田のもとへ近づいてきているといるのに。
「く、来るなぁ!」
林田は少女に向かって叫んだ。恐ろしさでよく声が出ない。
少女は立ち止まった。
林田はホッとして「はぁ…」とため息をついた。
しかし。
ザ、ザ、ザ、ザッ
少女は口を口裂け女のようにして速いスピードでこっちに来るではない
か。
「来るなぁ!く、来るなと言っているだろ!」
林田の叫びは少女には届いていない様子。
ズカズカととこっちに来る。
少女は怯えている林田の目の前で立ち止まった。
顔が笑っている。うれしそうに。
少女は雪と間違えてしまいそうなくらい真っ白な手を林田な顔に近づけ
た。
—何をする気だ。
林田の頭の中は恐怖と焦りしかなかった。
恐怖で声も出なくなってしまっている。
林田は目をつぶった。強く、強く。
しばらくたった。
しかし、何も起こらなかった。少女は消えたのだろうか。
ゆっくりと目を開ける。
林田は目をカッと開いた。
そこには血だらけの少女と後ろに、いつのまにか真っ赤に染まった湖が
林田の瞳に映ったのだから。
「う、うわぁぁぁぁぁぁああ!!」
《プロロ—グ終了》