二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 心霊探偵 八雲 【冬の温泉旅行記】 ( No.163 )
- 日時: 2011/08/23 10:15
- 名前: 凪 (ID: Au8SXDcE)
第一章 悲劇
(6)続き
「いろいろとトラブルが入ったんで」
八雲が不機嫌そうに言う。
「晴香ちゃんのか」
〝トラブル=晴香ちゃん〟と頭の中では、最近そうなっている。本人
は、その気で持ちこんでいる気はないようだが。
「いや、その母親からです」
「え?」
——母親?とうとう母親まで来たか…八雲のやつ、そうとう疲れるな。
後藤は苦笑いした。八雲も、それにつられたのか苦笑いしている。
「んで?どんな依頼だ?」
「此処の女将の相談に乗ってやってほしい、と」
「女将ぃ?」
後藤が顔をしかめる。
「ええ。あいつの母親と此処の女将の仲が良くらしくて、しかも
その相談の内容が——」
八雲が顔を引きつらせている。と、言う事は———
「怪奇現象——だな」
後藤が話をつなげる。
「まぁ…そう言う事です」
八雲は、そう言うと窓の外を見た。窓の外には湖が見えた。
「あの湖に何かあんのか」
後藤は、どうなんだ、と八雲に聞く。
「あの湖、三年くらい前から毎年三月十四日になると、湖が真っ赤に
染まるらしいですよ」
八雲が、おもしろそうに言う。
後藤は想像してみる。真っ白な冬景色に真っ赤に染まった湖——うん、
とてもいいものとはいえない。
「髪の毛の長い真っ赤なワンピースを着た少女も出る、とも聞きまし
た」
「真っ赤なワンピースを着た少女、ねぇ…」
「僕の左目にその少女が映りましたから、おそらく死んでいると
考えていいでしょう——」八雲は話を続ける。
「それと死者が毎年、おんなじ日に、湖で見つかっている、と」
「死者ぁ!?」
後藤が、おもわず大きな声を出してしまう。
「大きな声を出さないでください!」
八雲は迷惑そうにすかさず小声で後藤に言う。
辺りを見回すと晴香ちゃんと敦子、奈緒がこっちを見ていた。周りにい
たスタッフは、そわそわしている。それだけじゃない、他の客も。
——しまった。
「すまん。つい…」
「まぁ…たぶん大丈夫です。他の人は知らなかっただけですから」
「どういうことだ?」
後藤が首をかしげる。それを聞いて八雲はため息をつく。
「何回も同じことが起きたらインターネットや口コミですぐに伝わるで
しょう。何よりテレビでいろんな情報が流れます。ほとんどの人が
知っていても可笑しくはないんです」
「あ、ああそう言う事ね…」
後藤は納得する。最初からこう言ってくれればいいものを。
——ん?ちょっと待てよ。
「死者、って事は自殺か殺害か——」
「女将に聞きましたが、〝自殺〟だったそうです。け
れど、どんな状態で自殺と踏んだのかは不明なので公
衆電話で聞こうかと思ったんですよ」
「俺——じゃないな。長野県警じゃないし。——ああ、そうか!」
「だからうるさいと言ったでしょ」
あいかわらずしつこい野郎。だがいちいち相手していたら自分の体
が持ちやしない。
「若林だな」
「ご名答」
若林——この人物は長野署の刑事で以前、大森真人の件で一度関わった
ことがある人物だ。この男ならおそらく何か知っているに違いない。
ふと、八雲を見ると八雲は立ち上がりどこかに行く準備をしていた。
「いまから行くのか?」
「あたりまえでしょう。もちろん、後藤さんもですよ」
八雲が後藤の方をちらっと見て言う。
——何故俺まで?
家族旅行に来たっていうのにまた事件か。当然——
「俺は断r」
「あれ、後藤さんの車ですよね」
後藤が断りを入れる前に八雲が旅館の外の脇に止めてある車を指さし
た。あれは、まぎれもなく俺の車。送迎しろって事か。
「ああ、分かったよ!」
後藤は勢いでソファから立ち上がる。しかし、浴衣きているから
スーツに着替えなきゃな。ってか俺は何でスーツ持ってきてんだ。
後藤は自分の行動に疑問をもつ。
八雲は、にやりと笑って言った。
「分かればよろしい」
続
お知らせ☆
明日から更新が遅くなる場合があります。
その時はご了承ください。