二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 心霊探偵 八雲 【冬の温泉旅行記】 ( No.192 )
- 日時: 2011/06/05 12:39
- 名前: 凪 (ID: 8ru7RWNK)
第一章 悲劇
七
晴香は、敦子・奈緒とともに旅館の土産屋にいた。
敦子と奈緒が楽しそうにズラッと並んだ土産を眺めている。
晴香は、まだかとソファでくつろぎながら会話をしている八雲と後藤を
見た。おそらく、真っ赤に染まるという湖の事だろう。話が終わったら
どうせすぐ後藤を連れて行ってしまうのだろう。自分は行くべきだろう
か。だが、旅館に敦子と奈緒だけを残しておくのは、さすがにまずい。
「ねぇねぇ、晴香ちゃん?」
「え?あ、はい」
気付くと、敦子がお菓子のパッケージを指さして晴香の方を向いてい
た。
「何でしょう?」
「この〝白樺〟って書いてあるお菓子って有名なの?」
あぁ、確か聞いたことがある。
「はい。そうですね…雑誌とかにたまに載っていますね。確か中身は
ホワイトチョコレートだったと思います。って私もまだ食べたことが
ないんですけどね」
晴香は少々苦笑いをした。隣を見てみると、もうすでに敦子がそのパッ
ケージを手に取っていた。
「じゃあ…買ってみようかしら。奈緒ちゃんも食べるわよね?」
「あー」
奈緒がうれしそうに飛び跳ねている。晴香はそんな奈緒の様子を見てい
ると気持ちが和むような気がしたきた。私にもこんな妹がいたのなら。
そう思った瞬間、ふとある事が晴香の頭をよぎった。
それは、双子の姉・綾香の事だった。
私のお姉ちゃんも今の私みたいに自分を心から愛してくれていたのか
な。私といてお姉ちゃんは幸せだったのかな。
こんな私といて———
「あー?」
晴香は現実に引き戻された。すぐ隣には、奈緒が心配そうな顔をしてい
た。
晴香のブラウスを手でひっぱっている。
——そうだ。こんな子に気を遣わせてはいけない。しっかりしないと。
晴香はクスッと笑うと奈緒に目線を合わせるようにその場にしゃがん
だ。そして、頭の中で話しかけてみた。
——大丈夫。心配しないで。
奈緒にこの言葉が通じたらしい。奈緒は、すぐにうれしそうな顔だっ
た。
「じゃあ…お母さんの所にいこうね」
晴香は奈緒に手をさしだした。奈緒はそれを見て晴香の手を強く握っ
た。
晴香と奈緒が、もうレジにいるであろう敦子のもとへと向かうところ
だった。
「死者ぁ!?」
大きな声がロビー一階に響き渡る。
その瞬間、一階のロビーにいるスタッフ達がおどおどし始めた。
おそらくこの声の主は後藤だろう。晴香は八雲と後藤がいるソファの方
を見る。ちょうど八雲が後藤に注意を促しているところだった。
——後藤さん…。
晴香は苦笑いをした。すると、あわてて晴香と奈緒のもとに駆け寄って
来る足音が聞こえた。
敦子だった。
「ありがとうね、晴香ちゃん。奈緒ちゃんを見ていてくれて」
「いえいえ、とんでもないです」
晴香は照れ臭そうに言った。
敦子の手には中山温泉の文字が入っていた袋を持っていた。いくつか
入っているようだ。袋が膨らんでいる。レジを済ませるのが早い。
それと比べて、八雲と後藤は遅い。会話するのにどんだけ時間がかかる
んだ!晴香がイライラしながら八雲と後藤を見ていた。
「晴香ちゃんも行くんでしょう?」
「え——?」
敦子は、いつのまにか晴香のそばにいて、晴香と同じように八雲と後藤
の方を見ていた。
その顔は、どこか哀しそうな顔だった。
「とぼけちゃって。八雲君と一緒に用があって此処に来たんでしょ。
そうじゃないと八雲君は、こういうところに来ないもんね」
確かに。それは否定できない。
「彼とわざわざ一緒に来たって事は何かの依頼の謎解きかしら。
あの人も行くんでしょうね」
〝あの人〟というのは、おそらく後藤さんの事だと、晴香はすぐに見当
がついた。まぁ、おそらくそうだろう。どっかに行くにしてもお金がか
かるのを避けるとなると車が必要となる。それに、後藤がいて助かった
ときも多い。
「あ…でも私…」
いいのだろうか。敦子と奈緒を置いて行ってしまっても。
「いいのよ、遠慮しなくて。奈緒と私は温泉でも入ってゆっくりしてい
るわよ」
敦子は、そう言うとにっこりと笑った。本人はそう言っているが本当に
いいのだろうか———。
「ほら、早く八雲君の元へ行きなさいよ。もう準備するみたいよ?」
晴香は敦子に肩をポンッとたたかれ、八雲を見た。
八雲は、あくびをしながら眠たそうにして、後藤と並んで晴香と敦子の
元へと歩いてきている。
「じゃあ、遠慮なく」
晴香は敦子に頭を下げると早歩きで八雲と後藤の元へと歩き出した。
「警察、ねぇ…」
晴香は敦子が小声でつぶやいたのを聞き逃さなかった。
これは、どういう意味が込められていのか。
晴香に分かるはずがなかった。
続
—あ と が き—
久々に更新しましたね。
今回は、ほとんど?晴香目線で書いてみました。
敦子が呟いた謎の言葉。
どういう意味なのだろうか——??
ここでは明かすことはできませんが、原作を読んでみると——分かるかもしれないですね。