二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ONE PIECE—裏切りの白魔導士— ( No.23 )
- 日時: 2011/01/31 20:49
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
- 参照: http://ameblo.jp/ff7-perfume-love-y
第七話 覇王色の覇気
大きなこげ茶色の船。
リィフはその前で立ち止まり、少々面倒くさそうに一息ついた。
そして船の甲板上空までとても高く、跳躍する。
ゾロはひと跳びで船より遥かに高い位置までとんだリィフの姿を顔をしかめつつ見ていると、走り出した。
酒を片手で持ったまま、船の裏側からメインマストまで登る。
船の上の海賊達はリィフの想像通り、今から村を襲撃———な雰囲気だった。
部下共は全員甲板の上で武器を取り出していた。
しかし満月を背に高く跳躍した人影に気づき、指差し、口々に叫ぶ。
夜空へ跳躍したリィフは何回転か空中で繰り返すと、甲板の上に右手と両足で着地する。
甲板の床を見る形で着地するとゆっくりと顔を上げた。
「—————————— っ!!!?」
三下の海賊達は口から突如泡を大量に吹いてバタバタと崩れるように倒れていった。
ビリビリという空気の震えは、リィフから発せられたものだった。
船長らしき大男を残して船員はひとり残らず気絶した。
「は・・・覇王色の覇気・・・!!?」
男は辺りを見回し、怯えたようにリィフを見た。
自分ひとり残してあたりの仲間が一瞬にして倒れたらそうもなるだろう。
しかし片側だけ月光に照らされていたリィフの顔は見るものを恐怖と言う名の強い魅力で凌駕するものだった。
碧色の瞳には残忍さが滲んでいた。
「消えなさい。目障りですわ」
リィフが冷たく言い放つと、男も泡を吹いて倒れた。
碇の外れた船は、リィフの操る波によって沖へと運ばれてゆく。
あっけなかった。
そう思い、船の流れる方向に背を向け、歩き出す。
「———待て」
後ろからした声に、リィフは黙って立ち止まった。
そのまま、ゾロは心に浮かんだ疑問を口にする。
「わたくしはわたくし。それ以外の何者でもありませんわ」
ゾロはもうそれ以上問い詰めることはなかった。
「・・・見つけた」
夜道歩くふたりの遥か上空、大木の頂点に立っていた少年はそう言ってにやり、勝利と歓喜の笑みを浮かべた。
その少年は一瞬にして消え、大木の上に人を見かけた人は自分の目が見間違いをしたここと思っただろう。
しかし確かに少年はついさっきまで、そこに立っていたのだった。
「ひょ〜〜〜〜!ひょお!ほほいっへはんら??」
「何語だよそれ;」
鼻から口にかけて割り箸を突っ込んでいたルフィは、ゾロが帰ってきたことに気づき、変な言葉で話しかけた。
恐らく「よぉ〜〜〜〜!ゾロ!どこ行ってたんだ??」と言っていることは想像がついたが、あえて放置。
「はひはいほ(わりばし語)」
「・・・」
「ぶっひゃっひゃっひゃ!ふひー!ひょへはいほ〜〜〜!!(ルフィ、それサイコ〜〜〜!!)」
船長とウソップは同じ状態の顔、同じ言葉になっていた。
ナミとチョッパー、フランキーはテーブルの上の2人を見て(チョッパーは一緒に立っている)、爆笑する。
微笑んだリィフは、再び席を外した。
「ゴホッゴホッ・・・!ハァ・・・ハァ・・・うっ!!」
喉元にまで上り詰めたものをなんとかこらえる。
しかし口元に当てていた白いハンカチをみると、やはり赤いものがべっとりと付着していた。
壁に拳を叩きつける。
「はぁ・・・はぁ・・・。この、役立たず・・・。わたくしは、まだ・・・」
ずず、と壁に手をついたまま、暗い廊下でひとりリィフは四つん這いになって大量の血を吐いた。
口元から流れた血液をぬぐう。
この役立たずの体は、一体いつまで持つの・・・?
わたくしの望む、上下関係のない世界を見るまで、この体はもつの・・・?
「お嬢様!!」
じいやが走りよってくる。
治療せんとする、その手を振り払う。じいやは手を押さえながら、愕然とした顔をしていた。
「お・・・お嬢様・・・な「触れないで!」」
今のじいやの残り魔力じゃ治療をしたじいや自身が死んでしまう。
リィフはそうわかっているから、あえて冷たくあしらう。
動揺する執事をにらみつけ、よろめきながら一人でなんとか立ち上がった。
「このくらい・・・なんともないわ。いつもどおり・・・。いつもどおりよ」
深く、深く深呼吸した。
なんとか呼吸を落ち着け、リィフは再び立ち上がる。
満月のところに何かがよぎった気がしたが、それを気にする余裕をリィフは持っていなかった。
じいやはそこに棒立ちになったまま、ただただリィフが立ち去ってゆくのを見ているばかりだった。
「じいや。みんなが食べ終わったら大浴場へ案内して、その後ホールに連れて行ってね。ベッドは他の執事達に用意させましたので。わたくしは薬を飲んできます」
先程とはうって変わったしっかりとした声でリィフがそう言い、階段を上りきったところでちょうど海賊たちが部屋から出てくる。
口々にご満悦の様子で、笑っている。
じいやはリィフのことが心配だったが、主人の命令とあらば聞くしかなかった。
「・・・皆様、大浴場へご案内いたします。終わりましたら呼んでくだされば、寝室のホールまでご案内します」
「大浴場だって!」
「うっほーーー!踏んだり蹴ったりだな!」
「・・・至れり尽くせりだ、アホ。」
* *
海賊達が浴場で体を清めている間、リィフは部屋でさっきチョッパーに手渡された薬を飲んでいた。
今まで飲んだどんな薬よりも効くようで、彼女は心中この出会いと麦わら海賊団の船医の能力の高さに感謝していた。