二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ONE PIECE—裏切りの白魔導士— ( No.30 )
日時: 2011/02/06 20:31
名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
参照: http://ameblo.jp/ff7-perfume-love-y

   第十一話 涙




足元がふらつく。

しかし前を行くロビンにはそれが分かる訳もなく。

「先に行っててください、わたくしはちょっと用が」
「ええ。ご苦労様、リィフ」


後姿が遠ざかり、なんだかリィフはほっと一息、安心する。
———でも本当に、一緒にわたくしは乗船してもよろしいのでしょうか・・・?

・・・だってわたくしの中には、世界貴族の血が流れている。
全く情の無い人種。その穢れた血が流れているなんて。
そんな血を引くわたくしがこれから彼等の船で毎日を過ごすなんて。
不安と罪悪感に苛まれた。

わたくしの存在が、あの賑やかで明るくて。
そんな船の人々の心を、穢してしまわないだろうか・・・?



突然天地がひっくり返る。

「うっ・・・!」

酔っているのと同じような、気持ちの悪い感覚が自らを支配する。
倒れこんだリィフは、その苦しさに震える瞼を閉じた。
目を瞑ったまま耐える。

いつもこうして、ひとり戦ってきた。


海賊、山賊、あらゆる悪党共と、病。
———もしかしたら死への恐怖と孤独とだって。

目を瞑ったまま、膝を抱えて顔をうずめる。
すると微かに視界が暗くなるので、リィフは暗闇に少し安堵を感じながらまだ耐えていた。
突然、リィフの癖毛のくるくるカールを結った頭が誰かにくしゃくしゃっと撫でられて驚いた彼女は反射的に顔を上げた。
だが目の前には誰もいない。

しかし、隣にあぐらをかいて座った人物の気配になぜかほっとする。
気づけば病の寒気は癒えていた。

「まだ苦しいのか?大丈夫か?」
「うん・・・平気ですわ。あなたが来てくれたから」
「そっか。早く治るといいな」

ニコニコと屈託無く笑うルフィをリィフは不思議そうに眺める。
不思議な人。
知らぬ間に、リィフも照れたような笑みを浮かべていた。
そうね、治るといい。あなたにも迷惑かけないし、もっと長く一緒にいられる。
だが一緒にいたい気持ちと裏腹に、さっきの考えが脳裏を横切ってリィフは辛くなった。

その気持ちを知ってか知らずか、ルフィは彼女の肩に手を乗せていた。
嬉しかったけど、気づけばその手を振り払っている自分がいた。

「・・・ごめん、なさい。あなたが・・・わたくしに触れたら、穢れて、しまうから・・・」
「穢れる??なんで・・・!?お前、泣いてんのか!?」

理由のわからない涙が、赤い瞳からぼろぼろとこぼれる。
泣き止もうとすればするほど酷くなって肩を震わせ、ついにはしゃくりあげ始めてしまう。
やめなきゃ、泣くのを。じゃなきゃルフィ、困っちゃいますわ・・・っ!
そう思うのに、涙が止まらない。

「お前みたいな奴でも泣くんだな」
「失礼、ですわ。ひとを、血も、涙・・・も、無い、ひとみたい、に、言わ、ないでっ・・・!」

言葉が途切れながらも、リィフは一生懸命そう言う。
再びルフィはくしゃくしゃと頭を撫でた。
涙で濡れたままの顔をあげると、また隣には彼の笑顔があった。

「違ェよ!お前ゾロが怪我してたのに気づいたし、あいつを止められただろ?そんな強ェ奴も泣くことにびっくりしたんだ」
「・・・そう、ですか?」
「ああ!あの時、あいつを止めてくれてありがとな!」
「どうして?」
「だってあいつ、前にミホークって奴と戦って負けたときに“もう負けねェから”って言ってたんだ」

そんなことがあったのですね。
信念を貫き通そうと戦おうとしていたゾロの姿を思い出す。
あのとき、その信念—種類はわからなかったが—を強く感じたのだった。

「止めてなきゃ腹斬って死んでたかもしんねぇんだ」
「そう・・・」

やっと落ちついてきたリィフは、ため息とともにそう吐き出す。
少しばかりの沈黙があり、そして———。
思い出したように、重い口を再び彼は開いた。

「なぁ、穢れるって何のことだ?」
「・・・・・・・・」
「言いたくないんなら、良いんだ。無理に言わなくてもな!・・・そのうち、話してくれるか?」
「わかりませんわ。その時の信頼度次第」

不服そうにルフィは顔をしかめた。
まぁ、新聞も世界の情報にも興味のなさそうな青年にとってはわからなくていい。
むしろ知らないで。わたくしの、正体を。
知らないままでいて———。

「んじゃあいいよ。みんなのとこ戻ろうぜ!」
「・・・・・いいんですの?聞かなくて」
「良くねェけど・・・・。話したくないんだろ?だったら、いいんだ」

深追いをしないルフィに驚き、彼の優しさに感謝した。
去っていく麦わら帽子を被った後姿をリィフは複雑な気持ちで見送っていた。

さようなら、ルフィ。

そのまま振り返らずに進んでくれたら、わたくしは潔くあなたの視界から消えますわ。
あなた方が、穢れてしまわないように。
そうしたら音楽家は、他のひとを見つけてくださいね。

「それとなぁ、リィフ!」

ルフィはわたくしのほうへ、振り返ってしまった。
草原の上、ルフィは遠くから叫ぶ。




            “—————おれは、お前がどんな奴でもいい!代わりはいねェ!お前は、おれの仲間だ!!”






心に響いたその言葉。
偽りの無い、真摯なその言葉。
深く染みこんだその言葉に、彼女は再度頬に瞳から流れた暖かい一筋の水筋を感じた。