二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ONE PIECE—裏切りの白魔導士— ( No.39 )
- 日時: 2011/02/18 23:37
- 名前: Aerith ◆E6jWURZ/tw (ID: hQNiL0LO)
- 参照: http://ameblo.jp/ff7-perfume-love-y
第十三話 紫霧の中で
食器棚から音を立てないよう、静かにコップを取り出し終えたリィフは胸の激痛に強く目をつぶった。
最近には珍しく、痛みはすぐにひいたのだが——後ろに誰かの気配を感じたリィフはじっとその気配を探った。
ぱっと振り向くと、そこには——鍵付き冷蔵庫の前の前でどう開けようかと首を捻っているルフィの姿があった。
緊張した肩の力を抜いたリィフは、ルフィの肩を叩く。
「どっ!わっ!!?」
「・・・もう。その冷蔵庫、鍵付きでしょ?開かないのよ」
「ギクッ!?べ、べべべ別につまみ食いしようとしたワケじゃねェぞ!!」
そうは言ったものの、ルフィの視線は泳ぎ、熱くも無いのに汗が滝のように流れている。
自滅してるわ、とリィフは少しおかしくなる。必死に隠そうと口笛を吹く彼をよそに、リィフは薬を飲んだ。
「なんだ、やっぱりまだ具合悪ィんじゃねぇか」
「別に。薬を飲む必要、あるだけ」
「ま、いいんだけどよ。鍵・・・どうにかして開かねェかなぁ」
「やっぱりつまみ食いしようとしてる!」
あはは、とリィフは思わず笑ってしまう。
ルフィはむっとそんな彼女を見ていたが、ふてくされたように出口へ歩いていった。
「寝る!」
「そう。おやすみなさい」
「あ・・・いっけね、忘れモン」
一言そういったルフィは走って戻ってきた。
忘れ物?何か持って来ていたかしら?
そう思い、油断していたリィフに近づいたルフィは、そのまま彼女に頬に手を伸ばし———。
「・・・・・え」
「よし。仕返し完了!!ほんじゃ寝る!」
彼の立ち去る、草履の足音を聞きながらリィフは自分の顔がかぁ〜っと火照ってきているのを感じていた。
あのとき、起きてたんだわ。
感じ取ってたんだわ。
子供じみた、いたずら・・・。
そう考えると無性にリィフは腹が立ってきた。
本当はそもそもあんなことをけしかけた自分がいけないのだが、なぜか腹が立った。
してやられたり!
リィフはもういなくなった現行犯と自分の愚かさに憤慨した。
「もうッ!!」
見張り台に登ったリィフはしばらくの間、体育ずわりで膝を抱え込んで縮こまったまま頬を膨らませていた。
なんか無性に敗北感を感じる。
今度はため息をついたリィフは、少し明るみ始めた空の自分の目線の先に紫霧を発見した。
フロリアントライアングル
魔の三角地帯——だ。
小さな足場の中ですっくと背筋を伸ばして立ち上がり、フルートを甲高く吹く。
間髪入れずに、ウソップが叫びながら甲板に飛び出てきた。
寝巻きのままよほど幽霊が怖いのか首から十字架とにんにく、手に『悪霊退散』と書かれた桃太郎旗を持っている。
「なんだァ!?敵襲か、敵襲かァ!?悪霊か、幽霊かァ??」
完全に寝ぼけている。
これだから男子はもう、などとリィフは思ってあきれた。
続いて出てきたゾロは豪快な欠伸をひとつすると芝生の上の隅で背を船壁にあずけ、再び眠りについた。
よく昼間アレだけ寝ていて今も寝れるものだとリィフはあきれるよりも感心してしまった。
「んんんリィフちゅわあぁぁああん!今日も最高に可愛らし・・・」
船内から出てきた瞬間に目がハートになったサンジの言葉は途中で途切れた。
彼はその代わり真上の見張り台から降ってきたリィフのハイヒールの一撃を食らい、「オブゥ!!」と言いつつ倒れる。
「朝っぱらからうるっさいわね!リィフ何かあったの?」フロリアントライアングル
「あ・・・・・。おはようございますですわ。ほら。どうやら魔の三角地帯に突入したらし「えええ!?」」
ナミは絶望的な声を上げて体を震わせる。
一緒に出てきたロビンはにっこりとしているが、逆に軽く怖い。
頭をぼりぼり掻きながら出てきたルフィは大きな欠伸をして「サンジ!メシーーー!!!!」と叫んだ。
「ちょっと黙ってろお前は全く・・・」
「おい!なんじゃこりゃ!?」
「フロリアントライアングルですわ」
「うっほ〜〜!!動くガイコツに会えるんだな!!?」
一気にテンションが上昇したルフィは瞳を輝かせたが、逆に隣で寝ぼけていたウソップは一気に目が覚めたらしい。
顔からは見事に血の気が引き、どこからか紫色の帽子とマント、上着を取り出して身に着けて震えだした。
後々出てきたチョッパーも口をあんぐり開け、瞳には涙をためている。
「おいおい、全く前が見えねェじゃねェか」
「随分深い霧ね」
フランキーとロビンは呑気に話しているが、ゾロとサンジはまた喧嘩をしている様で「ぐるぐる」、「クソマリモ」等聞こえる。
何か、誰かの歌が聞こえた気がしてリィフはルフィの肩を叩く。
「ねぇ。今、何か聞こえなかった?」
「うん?そうか?」
〝——— ヨホホホ〜 ヨ〜ホホ〜ホ〜♪〟
「あ、聞こえた」
「そうですわよね」
〝——— ヨホホホ〜 ヨ〜ホ〜ホ〜ホ〜♪〟
歌声は紫霧の向こうから聞こえてくるようだ。しかもそれはだんだんはっきりと聞こえてくる。
他のクルーたちにも聞こえてきたようで、一堂はピタリと静かになった。
チョッパー、ナミ、ウソップは涙目で震え、目の前の一点を凝視している。
そこには一艘の—サニー号よりも遥かに古く大きな—船があった。
〝ビンクス〜の酒を〟
古い船は、まるで幽霊船にたとえられるような外装をしていた。
その上からはひとりの長身な人影。
ウソップはそれを、声にならない声をあげながら震える手で指差した。
〝とっどけにゆっくよ〟
「「「出たぁぁあああああああああ!!!!」」」