二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナイレ 魔法使い物語【オリキャラ&武器&技募集中!】 ( No.880 )
- 日時: 2011/04/19 00:11
- 名前: 海穹 ◆EZarcElGGo (ID: UruhQZnK)
氷歌視点になります。
〜イナズマイレブン世界編〜
朝から雨が降っていた。どんよりとした色の空が何処までも続いている。雨は止みそうもない。
この空は今の有人の心に似ている気がする。何処までも続く鈍色の空を悲しみとすれば、とても似ている気がするのだ。
「月城。」
風丸君が私の名を呼んだ。
「何?」
「監督が今日は練習なしだって。試合近いのに雨でぬれたりしたら体調崩すかもしれないからって。」
「……分かった。ありがとう。」
私はそう言って歩き出した。
廊下を歩いていると有人とすれ違った。有人は下を向いて何も言わずに部屋に入っていった。やっぱり悲しみで溢れている。有人の心は悲しみや辛さで溢れているのだ。すれ違うだけで私の頭に有人の気持ちが伝わってくる。テレパシーが強すぎる思いを勝手に感じてしまうから。いや、こんな力が無くても見ていれば有人がどう思っているかくらい分かるけどね。
廊下の先に行くとそこには円堂君がいた。悔しそうな顔をしている。何かあったのが見てとれる。
「月城……俺どうしたらいいんだろう。鬼道になんて言ったらいいんだろう……」
……円堂君……
「今の有人に何を言っても無駄かもしれない。」
円堂君は私のその言葉を聞いて悲しそうな顔をした。
円堂君には今の有人の気持ちは分からない。円堂君は大切な人を失ったことが無いから。だから分からないんだよ有人の気持ち。そして今の有人の気持ちを受け止められるのは
同じ大切な人を失ったことがある人だけ。
「……馬鹿だよね有人って。」
「え?」
円堂君が驚いたような声を出して、丸い目で私を見た。
「馬鹿だよ。辛いくせに意地はってさ。本当に馬鹿。」
「……月城……」
円堂君が少し悲しそうに私の名を呼ぶ。
「私が何とかする。円堂君はいつも通りにしてればいいよ。いつもみたいに鬼道って元気よく呼んで、楽しくサッカーしてればいい。」
私はそう言って有人の部屋に向かった。
コンコンと扉をノックする。
返事はなかった。入ってほしくないのでしょう。でも私は入った。何を言われようとも私はあなたを悲しみから助けだす。あなたの暗く陰ってしまった心を私が晴らして見せる。
扉を開けると殺風景な部屋が広がっていた。綺麗に整頓されている机の上の本。有人の性格が見てとれる部屋だ。
「……何の用だ。」
有人はベットに腰かけていた。泣いていたのかもしれない。そう思ったのは有人がゴーグルを取っていたから。紅い目が私を見る。あまり見たことのない有人の紅い目。
「分かってるでしょ?」
私は淡々とそう言った。
「……慰めに来た、か?」
フッと有人が鼻で笑う。そんなことのためにわざわざ来たのかって思ってるのでしょうね。でも違う。
「慰めじゃない。今のあなたに慰めなんて意味を成さないからね。」
有人が驚いた顔をした。なんで分かった、そう思っているのが見え見え。
「泣いてたの?」
私が有人にそう聞くと有人の紅い目が私を見なくなった。
「……」
有人は何も言わない。目をそらして何処かを眺め続ける。
「ちょっと来い。」
私はそう言って有人に近づいた。有人は驚いた顔をして私を見る。
今の有人に励ましも慰めも届かない。絶対に届かない。じゃあどうしたらいいのか。
そんなの簡単。
悲しみを辛さを誰かにぶつければいい。自分の中に悲しみを留まらせていたらいつまでも前を向けはしない。
私はパチンと指を鳴らした。