二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナイレ 魔法使い物語【オリキャラ&武器&技募集中!】 ( No.888 )
- 日時: 2011/03/26 18:09
- 名前: 海穹 ◆EZarcElGGo (ID: UruhQZnK)
〜イナズマイレブン世界編〜
「……」
ゆっくりと目を開けた。ぼやけている視界に入ってきたのは蒼い海と晴れ渡った空とたくさんの花だった。
どうやら泣き寝入りをしてしまったらしい。氷歌に抱きしめられて泣いてしまってから記憶が曖昧になっている。どれだけ泣いていたのかも分からない。情けない話だ。
「お目覚めですか?」
明るい声が聞こえた。氷歌の声だ。
「あぁ。」
ぼやけていた視界がはっきりしてきた。もう一度しっかり辺りを見てみると海のそばに氷歌がいた。砂浜と海の境目。もう一歩踏み出せば海に入ってしまいそうなほど近く。
「もういいの?」
氷歌はそこから俺の方に歩いてきた。もう泣かなくていいのかという意味で言ったのだろう。
「もう十分だ。」
自分でもあそこまで泣くとは思わなかった。馬鹿だな俺は。少し優しくされただけで少し気持ちを分かってもらえただけであんなに泣くとはな。
「じゃあ戻ろうか。」
氷歌の笑顔。本当の、心からの笑顔が俺に向けられた。
「……そうだな。」
俺は立ちあがって、歩き出した。
花のトンネルを通っていると氷歌が話しかけてきた
「有人。」
凛々しいような感じも、優しいような感じもする声。
「なんだ。」
「影山零冶にはもう会えないよ。」
「……あぁ。分かっている。」
「でも、あなたの心にいるから。」
……心……?
「人が死ぬのは人に、大切な人に忘れられた時だよ。人に忘れられない限り、人に覚えてもらえている限りその人は死なない。」
……氷歌……
「だから忘れたら駄目だよ。覚えててあげるの。」
氷歌は俺の方を見て、ニコッと笑った。
覚えている……か……
「綺麗事かもしれないけど私はそう思ってる。」
氷歌は前を見てまた歩き出す。
「……忘れないさ。」
俺はそう呟いた。氷歌はそれを聞いて不思議そうな顔で振り返り、その顔で俺を見た。
「……有人?」
不思議そうな声を氷歌が出した。
「ありがとう。」
本当にありがとう。氷歌。おまえのおかげでまた前を向いて歩ける。おまえが導いてくれたんだ。おまえが俺の手を引いてくれたんだ。悲しみに飲み込まれそうだった俺をおまえが救ってくれたんだ。
だからおまえに何かあって、今度はおまえが悲しみに飲み込まれそうなときは俺が救おう。おまえを導こう。
約束だ。